いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「谷中びんづめカフェ竹善 猫とジャムとあなたの話」竹岡葉月(集英社オレンジ文庫)

谷中に住む女子大生の紬は、故郷の母親が送ってくる大量の野菜に困惑していた。思いあまって捨てようとしたところ、謎の英国人男性にとがめられ、彼の営む“びんづめ専門カフェ”に連行される。そこで紬は、野菜たちが保存食として生まれかわっていくのに感動し!?
コミュ障女子大生紬と英国人セドリック、彼の義理の息子武流が織りなす、おいしい下町人情物語。


やべえ。紬ちゃんが好きすぎる。
主人公の卑屈ひねくれ女子大生・鈴掛紬の口が悪い。これが最大の魅力。
相手が高学歴官僚と知れば唾を吐き、相手の出自がブルジョアだと知ればこれまた唾を吐き、ウェーイ族には日々呪詛を吐き、不登校児への小学生の善意の行動には、自身の小学生時代の黒歴史を引っ張り出して偽善だと断罪する。普通の人なら陰口でしか言えないことを、面と向かって言ってのけるロックな生き方が素敵。これは友達いないのも納得だw
それでいて、自分に自信がないながらも何事も挑戦と前向きな姿勢や、赤の他人に本気で怒れる情に厚いところがあったりするから憎めない。ここまででもいいキャラなのに、それに加えてフランスパンを丸々持っていって弁当にするワイルドさに、お酒のファーストチョイスが焼酎という渋さなんか見せられたら、惚れてしまいますわ。
もう一つの魅力は瓶詰保存食。タイトルにはジャムとあるが出てくるのは瓶詰全般で、甘いものだけでなくしょっぱいものも出てくる。イギリス人マスターの丁寧な説明&嬉しそうに作る料理風景と、それをどれも美味しそうに食べる紬のリアクションの相乗効果で胃袋を刺激してくる。その豚のリエット、一瓶ください(懇願)
とにかく紬のキャラクターが最高だった。この手の人情譚としては割と重めテーマが多い中、彼女のパワーとぶっちゃけトークで笑えて軽く読める話になっていたのもポイント高い。