いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「青雲を駆ける 5」肥前文俊(ヒーロー文庫)

フランコからの要請で、島の東側の村を回ることになったエイジ。鍛冶師として東の村に道具を作ることが主目的ではあるが、東の村には、この島を作ったご先祖様が最初に立ち寄った浜があると聞き、
日本に繋がる手掛かりがあるかもしれないと考える。弟子のピエトロ、ダンテ、レオ、カタリーナを連れて旅立つことになったのだが、その前日、タニアが嫌な胸騒ぎがすると言って出立を引き留める。さらには巫女のアデーレまでもがこの旅に不穏な神託を受けたと言い、エイジは不安を抱えたまま、シエナ村を発つことになった。まずはナツィオーニの町に行き、ナツィオーニとフランコから目的地を聞く。今回の派遣は東の村と西の村の関係を取り持つための一環であり、エイジたちに危険はないと言うのだが――。


弟子たちと共に、島の東側を旅するシリーズ第5弾。鍛冶師としては東西の文明水準の差を埋めるため、エイジ個人としてはこの島の秘密、日本に帰れるかどうかのヒントを得るための旅路。
タニアさんとのイチャイチャタイムお預けか。まあ、そこはしょうがないけれど、肝心の旅の方が冤罪を吹っ掛けられて命からがら逃げかえってきただけなのはどうだろう。序盤の不穏な空気ときな臭さである程度分かってはいたが……。
命を懸けた逃走劇には緊張感があったものの、政治に捨て駒同然で利用されていること、初めから先の展開が分かってしまっている点、背負わなくてもいい苦労をしているようにしか見えないことが重なって、読んでいてあまり愉快なものではなかった。事件後これといってスッキリする要素がないのも辛い。
道中で面白かったところていえば、訪れた村の貝殻職人の道具を作っている時くらい。鍛冶仕事している時が一番生き生きしていて、読んでいても面白いと再認識した。
それでも、エイジ個人の目的の方は興味深かった。
エイジの思惑とは違う事実が突きつけられ、逆に謎は深まった。この謎が物語に、エイジの今度にどうかかわってくるのかが楽しみ。それにしても、この問題をこんなに真面目に取り上げるとは思っていなかった。
でも、衝撃のラストで悩んでいる暇はなくなるかな。次は「村」で「生活」の話で、間違いなく必要な苦労なので、ピンチになっても今回より楽しく読めそう。