いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居」世津路章(電撃文庫)

はじめまして! わたしは、池野彗花。この春から、高校一年生です。お母さんが働いてるから、おうちの中のことと弟・妹のお世話はわたしの仕事なんだ。
今一番気になっているのは隣の席の庭上蓮さんのコト。クラスじゃ不良だヤンキーだって怖がられてるけど、なーんかそうは思えなくて……。
だけどある日、偶然彼女の秘密を知って一緒に住むことになっちゃって?!
「誰にもアタシが漫画描いてるってバラすなよ。バラしたらコロス」
わたしの家を作業場にして、新人賞を目指して頑張る彼女を、ささやかながら応援してます。ちょっぴり怖いけど、悪い人じゃないって知ってるから。
そんなこんなで、わたしとあの娘のナイショな青春グラフティ、はじまります!


母子家庭で小さな双子の母替わりをする彗花と、本気で漫画家を目指す見た目はヤンキーな蓮、女子高生の奇妙な同居生活を描く物語。
創作×百合ものかな、なんて不純な動機で読み始めてしまったことに対して謝りたくなるくらい、純粋で綺麗な友情と家族愛の物語だった。
特に優しさに溢れるキャラクターたちと、彼女たちが作る作品の空気感が良かった。
不良っぽい見た目や悪い噂の色メガネで相手を見ることなく、蓮の良いところを次々と見つけていく彗花。つっけんどんで勘違いされながらも、不器用に彗花を気遣う優しさを見せる蓮。小さな子の手前母のいない寂しさに蓋をしている彗花と、親に恵まれなかった蓮のどちらにも心の傷が見え隠れしている分、より尊くて眩しいものに映る。二人が惹かれ合うのは必然だったのかもしれないな。
それに、彗花の小さな弟妹がこれまた天使。
トラブルメーカーになることもあるけれど、落ち込んだ姉を一生懸命慰めたり、初めは怯えていた蓮に対して最後には「れんちゃん」と呼んで仲良くなっている姿を見せてくれたり、泣きたくなるような、でも心が温かくなるような、健気な姿を見せてくれる。
よかった。一途に友情と信愛を描く物語に心が洗われるようだった。(直前に読んでいた本が悪いともいう)




―ストーリーに影響はないけど、ちょっと気になること―
著者は女の子の髪型にこだわりがあるようで、描写が細かくて丁寧。
しかし、その分だけ挿絵とのギャップが気になる。

彗花=文:ボブ 絵:ミディアムかそれ以上
蓮=文:セミロング 絵:腰まであるロング

事前の打ち合わせなり修正なり、なされないんですか?(^^;