いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」二丸修一(電撃文庫)

幼なじみの志田黒羽は俺のことが好きらしい。家は隣で見た目はロリ可愛。陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系と文句なしの最強である。
……でも俺には、初恋の美少女で学園のアイドル、芥見賞受賞の現役女子高生作家、可知白草がいる! 普通に考えたら俺には無理めな白草だけど、下校途中、俺にだけ笑顔で会話してくれるんだぜ! これもう完全に脈アリでしょ!
ところが白草に彼氏ができたと聞き、俺の人生は急転直下。死にたい。というかなんで俺じゃないんだ!? 俺の初恋だったのに……。失意に沈む俺に黒羽が囁く――そんなに辛いなら、復讐しよう? 最高の復讐をしてあげようよ――と。


初恋の子がイケメンと付き合い始めたことに絶望し復讐を企てる主人公・末晴。彼を焚きつけるすでに振られ済みの幼馴染み・黒羽、冷血女王なのに何故か末晴にだけ優しい末晴初恋の相手・白草。三者三様に、叶わなかった初恋に対する復讐劇が繰り広げられる初恋復讐ラブコメ

なんて、なんて残念なんだ君たち。おかげでとんでもなく面白かったじゃないか。
普通ならサスペンスな愛憎劇が繰り広げられそうな状況の中、それをコメディに変換しているのがキャラクターの残念さ。狭量、自尊心、闇、詰めの甘さ。三人のダメなところ、負の部分を存分に盛り込んで、勘違い、空回り、すれ違いを複雑に絡ませていくストーリーが巧みで目が離せない。
中でも「詰めの甘さ」がポイント。
女の子の二人は計算高さと嫉妬深さが目立ち、作中男子たちの「ヒェッ」が飛び交うバイオレンスな性格ながら、時折見せるボロと可愛い一面で憎めないキャラになっている。二人ともズルいわ。また、一名が復讐を完遂してしまう戦慄のラストも、その後のあまりの残念さに苦笑するしかなくなる、実に彼ららしいオチ。
……ん? ちょっと待て。この結果、某先輩の言う通り全員敗北だろう。男の子も女の子もみんな、幼馴染みが盛大に負けてるじゃねーか。絶対負けないとはなんだったのか。まあ、続いたから最終的には負けないのかもしれないが。
そんなわけで、三人とも好き合っているに振られた状態で次回へ。
正真正銘の幼馴染み・黒羽、一応幼馴染み・白草、幼馴染みと言えなくもない・顔見せ新ヒロイン。幼馴染みの解釈が勝敗を分ける? タイトル詐欺じゃなくなるところまで行ってくれ。