いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「リベンジャーズ・ハイ」呂暇郁夫(ガガガ文庫)

人体に有害な『砂塵』によって、文明が一度滅びた近未来。異能を操る『砂塵能力者』たちが出現し、力を持っていた。“掃除屋”チューミーは、因縁の復讐相手・スマイリーの行方を探りながら、殺しを請け負っている。あるとき、治安維持組織の『粛清官』に身柄を拘束されてしまったチューミー。だが、意外な提案を受け、一時的に協力関係を結ぶ。バディとしてあてがわれたのは、「優秀だがワケあり」のシルヴィ。出自も性格も正反対の二人は、反発しつつスマイリーを追うが……。

第13回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。


文明が一度滅びた近未来での異能アクション。
ダークヒーローな主人公がとても良かった。
存在のミステリアスさ。常に冷静沈着に見えて、心中では復讐の炎を燃やし続ける暗い熱さ。能力者同士の対決が当たり前の中で、唯一異能なしで渡り歩く戦術眼と度胸。文句なしで格好いい。
また、能力の強弱よりも能力の使い方が勝敗を分ける異能者同士の戦いに、異能なしで相対する主人公は見極めを重視する戦い方。どちらにしても駆け引き重視のバトルシーンが面白い。
その異能バトルだけでなく、追う側と追われる側の駆け引きあり、読者を騙すミスリードありで、その分厚さに違わぬ読み応えのある作品だった。
それだけに最後が弱いのが残念。
ラスボス、あれだけ引っ張ったのにどうしてあんなに最期があっさりになってしまたんだ。
もう一つ、主人公が途中からいい人になっていくのが寂しい。あの復讐鬼にはダークヒーローのまま散るか去るかしてほしかった。あれだけの怨念情念を感じたのに。まあ、こっちは好みの問題だけど。
それでも新人らしからぬ完成度と、読ませる力のある作品だった。