いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「キノの旅 XXII ―the Beautiful World―」時雨沢恵一(電撃文庫)

キノとエルメスは誰もいない街を走り――そして、国の南側で、一つのドームを見つけた。「よし、行ってみよう」そのドームへ続く道へとエルメスを傾けた。薄暗いドームの中には、平らな石の床が広がっていた。その上に、無造作に散らばっているのは、多種多様な白い骨。薄暗闇の中で、骨はまるで、ちりばめた宝石のように光っていた。「なるほど……」「一つ謎が解けたね」キノは、滅多に点灯させないエルメスのヘッドライトをつけた。ドームの床を、真っ直ぐな灯りが走った。「いくよ」「あいよ」(「餌の国」)他全11話収録。


あ、電撃文庫って随分シンプルなデザインになってたのね。背が青に白字なのも前と違う。いつ変わったんだろう。
↑ここ数巻何もないのに、とりあえずカバーを外してしまう人の図。


今年は7月なキノの旅最新刊。20周年おめでとうございます。
今回は世の不条理を謳う話が多く、遣る瀬無さが強く残った。その印象を決定付けたのが「川の畔でb・a」。ほんの少しの我慢、ほんの少しの運が足りず、掴めなかった幸せに対する悪態が強烈。
そんな中で爽やかな後味を残してくれるのがフォト&ソウの「来年の予定」。泰然としたキノとは違う、元気なフォトらしい話でこの巻で一番好き。それに、ふとしたきっかけで運を掴む話で、不条理話と対になっている点も面白い。ああ、だから「誰もが幸せになれる方法はない。誰にも幸せになれた方法はある。」なのか。
あとは「届ける話」。「コロシアム」前のシズが読める日が来るとは。昔のシズがカッコいい。口絵でかわいいシズ様やった後だったので余計に。
あとがきは20周年ならではで面白かったのだけど、それ以上に直後の黒星先生の一枚にやられた。シズwww キノはお師匠様そっくり……ってキノ本人に言ったら、めっちゃ嫌な顔されるんだろうなw