キノとエルメスは誰もいない街を走り――そして、国の南側で、一つのドームを見つけた。「よし、行ってみよう」そのドームへ続く道へとエルメスを傾けた。薄暗いドームの中には、平らな石の床が広がっていた。その上に、無造作に散らばっているのは、多種多様な白い骨。薄暗闇の中で、骨はまるで、ちりばめた宝石のように光っていた。「なるほど……」「一つ謎が解けたね」キノは、滅多に点灯させないエルメスのヘッドライトをつけた。ドームの床を、真っ直ぐな灯りが走った。「いくよ」「あいよ」(「餌の国」)他全11話収録。
あ、電撃文庫って随分シンプルなデザインになってたのね。背が青に白字なのも前と違う。いつ変わったんだろう。
↑ここ数巻何もないのに、とりあえずカバーを外してしまう人の図。
今年は7月なキノの旅最新刊。20周年おめでとうございます。
今回は世の不条理を謳う話が多く、遣る瀬無さが強く残った。その印象を決定付けたのが「川の畔でb・a」。ほんの少しの我慢、ほんの少しの運が足りず、掴めなかった幸せに対する悪態が強烈。
そんな中で爽やかな後味を残してくれるのがフォト&ソウの「来年の予定」。泰然としたキノとは違う、元気なフォトらしい話でこの巻で一番好き。それに、ふとしたきっかけで運を掴む話で、不条理話と対になっている点も面白い。ああ、だから「誰もが幸せになれる方法はない。誰にも幸せになれた方法はある。」なのか。
あとは「届ける話」。「コロシアム」前のシズが読める日が来るとは。昔のシズがカッコいい。口絵でかわいいシズ様やった後だったので余計に。
あとがきは20周年ならではで面白かったのだけど、それ以上に直後の黒星先生の一枚にやられた。シズwww キノはお師匠様そっくり……ってキノ本人に言ったら、めっちゃ嫌な顔されるんだろうなw