いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「処刑少女の生きる道 ―そして、彼女は甦る―」佐藤真登(GA文庫)

この世界には、異世界の日本から『迷い人』がやってくる。だが、過去に迷い人の暴走が原因で世界的な大災害が起きたため、彼らは見つけ次第『処刑人』が殺す必要があった。
そんななか、処刑人のメノウは、迷い人の少女アカリと出会う。躊躇なく冷徹に任務を遂行するメノウ。しかし、確実に殺したはずのアカリは、なぜか平然と復活してしまう。途方にくれたメノウは、不死身のアカリを殺しきる方法を探すため、彼女を騙してともに旅立つのだが……
「メノウちゃーん。行こ! 」
「……はいはい。わかったわよ」
妙に懐いてくるアカリを前に、メノウの心は少しずつ揺らぎはじめる。
――これは、彼女が彼女を殺すための旅。

GA文庫大賞、7年ぶりの大賞作。


過去にいくつも起こされた甚大な人災から、異世界転生してきた者『迷い人』が有無を言わせず処刑される世界。その処刑人を務めるメノウと、殺しても死なない【時】の迷い人アカリの出会いから始まる異世界ファンタジー
インパクトのある冒頭に始まり、好きなものを詰め込んでいる様なのに、破綻しないばかりか的確に中二心を刺激してくる各要素。尖がったキャラクターの個性。すいすい読ませるテンポの良さ。どこをとっても新人離れしていた。
ただそれでも、設定そのものに目新しさはないし(転生者が悪/災害認定されている作品は最近よく見かける)、アクションシーンはそれほど上手いわけでもなく、7年ぶりに大賞を出すほどなのか?と、かなり後半まで思っていた。
その評価は、窮地でアカリの態度が急変し、ある事実を口にしたところで一変する。
これは、、、【回帰】は“いつから”“何度”されている? 各所に散りばめられた思い出話と夢の話は、単なるキャラクター付けではなく、すべて仕掛けだったのか! やられた。
この一巻はまだまだプロローグの段階だった。終盤にきて、この先へと思いを馳せる要素が怒涛のように押し寄せてきて、次回以降が楽しみでしょうがない。


と、ストーリーはとても魅力的なんだけど、ヒロインの趣味に関しては激しく相容れないもの感じる。
モモにしろアカリにしろ、作者は振り回してくるタイプの女の子が好きなんだろう、たぶん。苦手なタイプなのもあって、人の話を聞かないキャラ×2はややストレス。まあ完全に好みの問題だけど。ヤンデレホイホイメノウちゃんの苦労が偲ばれる。