いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「シャルロットの憂鬱」近藤史恵(光文社文庫)

シャルロットは六歳の雌のジャーマンシェパード。警察犬を早くに引退し、二年前、浩輔・真澄夫婦のところへやってきた。ある日、二人が自宅に帰ってみると、リビングが荒らされており、シャルロットがいない! いったい何が起こったのか。(表題作)
いたずら好きでちょっと臆病な元警察犬と新米飼い主の周りで起きる様々な“事件”――。心が温かくなる傑作ミステリー。


閑静な住宅街に住む若夫婦と、二人が飼う元警察犬のシャルロット(♀6歳)が遭遇するご近所事件簿。
元警察犬設定が1話目以外ほとんど意味を成してないだとか、旦那さんの洞察力は時々冴えているけれど、これはミステリと言えるんだろうか?とか、ちょこちょこ首をかしげながら読んでいたのだけど、途中で楽しみ方が分かった。飼い主夫婦と一緒にシャルロットを愛でる作品だ、これ。
子供が出来ないがゆえにシャルロットを我が子のように可愛がっている夫婦の目線で見ているというのもあって、シャルロットがとにかく可愛い。
基本的には素直で従順で、元警察犬らしく躾けがしっかりされたワンコなのだけど、一皮むけばギャップでいっぱい。大型犬で元警察犬なのに臆病で、人の表情と空気を読むのが上手くて中身人なんじゃ?と思う時があるかと思えば、夢中になって散らかして後でシュンとしたり。賢い子だからこそズルを覚えていくのも、一つのギャップかな。それと小さい子には、人でも犬でも猫でも優しいのも魅力。
本来は犬同士の交流から生まれる人の繋がり、そこから生まれる人の機微を楽しむ作品だったと思うのだけど、シャルロットにメロメロで、もうそれだけでいいかと思ってしまった一冊だった。