いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「黒猫のおうて!」八奈川景晶(富士見ファンタジア文庫)

奨励会三段リーグ全勝優勝という偉業を成し遂げた天才棋士長門成海は、突如理由も告げずに将棋界を去ってしまう。その心変わりに日本中が驚愕する中、女流棋士三河美弦は強くなりたい一心で空気も読まずに成海の元までやってきて!?
「将棋を教えてください! 長門さんじゃなきゃダメなんですっ!」「男性棋士に負けてばかりの自分を変えたいんですっ!」「長門さんが将棋をやめたわけ……教えてくれませんか?」――ゴスロリ猫耳姿で取り入らんとする少女に、最初は指導も渋々だった成海も、次第に彼女の熱意に感化されはじめ――
天才棋士×ゴスロリ猫耳少女の本格将棋ラブコメ、対局開始!!


鳴り物入りでプロデビューする寸前に将棋を止めた天才棋士長門成海。そんな彼に教えを乞うべく、悩める女流棋士三河美弦が採った手段は、ネコミミゴスロリで突撃!? そんなインパクトのある導入から始まる将棋ラノベ
これはいいコスプレ。コスプレは本人ではなく姉の趣味。本人は恥ずかしくてしょうがないけど、それでいて本気で嫌がっているわけでもない。赤面を最大限に楽しめる絶妙な塩梅。素晴らしい。対局で着せる理由付けはちょっと強引な気もするが、そこはラノベだからってことで。
と、格好はおふざけだが、将棋に対する姿勢は真剣そのもの。
美弦の強くなりたいという真摯な想いと、そんな彼女に感化されて将棋についてもう一度考え始める成美。そんな二人の研究会は、弱点を把握し長所を伸ばすスポ根の特訓そのもの。対局も、緊張感こそ偉大な先輩に劣るものの、対局者双方の視点があって、両方の感情の動きが分かるのが読みやすくてよかった。
まあ、二人して将棋しか見えていないので、際どい恰好の美少女に詰め寄られてもドキッともしないし、デートをしても異性にときめかないので、ラブコメ感はゼロだけど。ファーストアタックが成功した理由が、欲情ではなく同情だからねえ。
そんなわけで、表紙とあらすじからは色物系かと思ったら、スポ根系が出てきて嬉しい誤算。少年が高みを目指す少女の熱意に応え、少女が傷ついた少年の復活を願う、爽やかな青春ストーリーに仕上がっていた。面白かった。
将棋ラノベが増えるといいなあ。書く側のハードルは相当高そうだけど