いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Unnamed Memory II 玉座に無き女王」古宮九時(電撃の新文芸)

「その時は――魔女〈ティナーシャ〉を殺すさ」
契約のもと、一年という限られた時間を共に過ごすオスカーとティナーシャ。だが突如二人の前に、ティナーシャのかつての婚約者・ラナクが姿を現す。古き魔法大国の血を継ぐ彼は、新たに国を興すと大陸全土への侵攻を企てて……。その時、オスカーとティナーシャの選んだ道とは――大陸の完全支配をもくろむ巨大魔法と王剣の剣士の、熾烈なる戦争の火蓋が切られる。


2巻は前半と後半でまるで別作品のようだった。
前半は、新興魔法士国クルクスの開戦と、魔女の時代前に滅びたトゥルダール王国の因縁の物語で、冷酷な歴史と悲惨な個人の記憶が語られながら、現在それに抗おうとする人間たちのドラマ。
その中で、ティナーシャは四百年背負ってきたものの大きさと四百年分の覚悟を見せつけ、オスカーは王の器と彼女への愛情と甲斐性を見せつけてくれる。特にクルクス内で、ティナーシャの情の深い振る舞いに惹かれ、王よりも彼女に味方する魔法士が出てくるエピソードがとても好き。
そんなわけで前半は、ファンタジーとして十二分な読み応えで面白い。
一転、後半はラブコメ風味。「ティナーシャさん、順調にデレてます!」な日常編。いや、問題解決にあちこち飛び回っているから、日常ではないか。
ともかく、二人で連れ立って出掛けては、あっちで見せつけこっちで見せつけ。いいぞもっとやれ。
信頼し合っている軽口のたたき合いもそうだが、スキンシップの質と量が1巻とは段違い。猫に化けて膝の上で丸くなるという荒業まで。この黒猫、可愛すぎませんか?
これだけ気を許していて、横恋慕の他国の王子が素直に諦めるくらいの仲睦まじさなのに、魔女本人は自覚無しっていのがまたいい。自覚した時を想像すると楽しくて。でも生殺し状態になることが多くなっていて、オスカーが少し気の毒w
次は他の魔女がちょっかいを掛けてくるらしい。ところでオスカーの母の秘密は? トゥルダールの宝物庫で追加の伏線だけ立てていったが、果たして出てくるのだろうか。