いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「さくら書店の藍子さん 小さな書店のささやかな革命」浅名ゆうな(富士見L文庫)

錆びれた佇まいの「佐倉書店」。偶然書店に入った康樹はそこで、しつこく珈琲を勧めてくる最高に野暮ったい女性、藍子に出会う。
佐倉書店の店長だという藍子は万引き犯も見逃してしまう程のお人よし。加えて書店は常連客しかおらず、赤字続き! 誰にでも優しく、のほほんとしている藍子を見かねて、康樹は何度も彼女を助けることに。そのうちに、康樹は狭い範囲でひっそりと生きる彼女を、ひらけた世界に連れ出したいと考えるようになって――。
小さな謎解きと、切なさがはじける青春初恋小説、全4編。


写真が趣味なオタクな主人公が小さな書店を気に入り、書店員の藍子や常連の老人たちと関係を深めていく物語。
「小さな謎解きと、切なさがはじける青春初恋小説」ね、、、まあ嘘は言ってないが。
主人公の幼馴染みの女の子がただひたすらに不憫。それしか感じなかった。
藍子(書店員)←康樹(主人公)←リカ(幼馴染み)の三角関係の話なのは間違いないのだけど、藍子は恋愛事は無頓着、康樹から藍子の矢印はおぼろげで、初めからリカから康樹の矢印だけが意志がはっきりしている。
その状態で、リカが康樹に一生懸命アピールしているのに全く気付いてもらえないというシーンが、かなりの頻度で入ってくるのに対して、藍子と康樹が会う時は大半他人がいて二人きりにはならない。しかも康樹の悩みは恋愛よりも将来とか人生の悩みがメイン。恋愛小説の括りではどう読んでもリカの初恋の物語のはずだった。
なのに結末がそれまでの流れをぶった切るような康樹と藍子の赤面エンド。なんだそれは。本当にただただリカが可哀想。
主人公の特技の写真は特に生かされないし、書店の経営も小さな謎解きもちょっと齧ってみただけのような入れ方だし、何をメインに書きたかったのかよく分からない作品だった。