いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「横濱SIKTH ―けれども世界、お前は終わらない―」ニリツ(LINE文庫)

横濱――巷では表立ってはいないが『SIKTH(シックス)』と呼ばれる異能力者達が確認され、事件が多発。最近では行方不明者まで出ているという荒様だ。そこには横濱の裏案件を「掃除」する元刑事を始め、蹴殺脳筋マシーンの男、カタコトの褐色ムスメ、詐称と女装が得意な美少年とそのメンヘラ保護者。
そんな癖の強い奴らが揃う街で、女子校生の城黒セカイは今日も普通に生きている。たとえ自身が異能のシックスだとしても……。
果たしてセカイが備える正しさは、この狂った世界の中で正しい武器となるのか、あるいは――


イラストレーターのニリツさんの小説デビュー作。
著者とイラストに同じ名前があって「杜さん、著者の欄間違ってますよ」と脳内ツッコミを入れていたら……本当にニリツ先生の作品だったとは。で、気になるその内容は、
中二心とハードボイルドを程よくブレンドしたスタイリッシュ異能アクション。
これまで普通に生きてきた異能持ちの女子高生が、他の異能者に出会い、いくつかの事件に巻き込まれ、生きていくための選択を迫られる。少女の心の成長が綴られる物語。
退廃的で危険な香りがする街・横濱の雰囲気が、性格きつめの釣り目女子のイラストがピカ一なニリツ先生の描く女性主人公にぴったりでとても良かった。
ただ、登場人物の心理描写が(あとページ数的にも)薄いので、やや物足りなさを感じる面も。
時々主人公以外の視点も入るけど、この設定と世界観なら完全な群像劇にした方が面白そう。物語に厚みが出るだろうし。
それでも作者の持つ世界観の雰囲気を味わう作品としては十分楽しめた一冊だった。