いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「天才王子の赤字国家再生術5 ~そうだ、売国しよう~」鳥羽徹(GA文庫)

『やはり手を組むべきは、グリュエールだな、間違いない! 』
ミールタースでの騒動を機に、大いに知名度を上げたナトラ王国は、空前の好景気を迎えていた。 追い風に上機嫌なウェインにとって気がかりなのは、西側への玄関口として成長著しいマーデン領の存在。 国内のパワーバランスを調整するため、ウェインはグリュエール王が治めるソルジェスト王国と手を結び国全体を底上げすることを画策する。
折しもグリュエールからの招待を受け、意気込んで外交に向かうウェインだったが、 そこでは予想外の展開が待ち受けていた! 戦雲垂れ込める、弱小国家運営譚第五弾!


西側の隣国ソルジェスト王国、マーデン領を得たことで隣国になったデルーニオ王国。その二国と事を構えるシリーズ第5弾。
前巻のラストにグリュエール王による宣戦布告予告があったので、戦争がメインの話になるのかと思っていたら、戦争を起こすまでの大義名分に、相手を裏切らせるための工作、戦争の結果よりも戦後の利益/損失の計算をメインで扱う、がっつり政治の話だった。良いですね、このシリーズはこうでないと。
前回、妹に出番を奪われた反動もあるのか、今回はウェインが思いっきり悪役……じゃなかった、主人公してた。
中盤まではいつもの通り、恥ずかしい自意識過剰だったり即堕ち2コマだったりの、ずっこけコメディやっていたのに、ホームグラウンドで本気を出したら無双状態。
その活躍を形容しようとすると、あくどい、卑劣、悪魔、頭のねじがぶっ飛んでる、まともな精神じゃない等々、思い浮かぶのは主人公とは思えない形容ばかり。いやーひどい(最大限の誉め言葉)。民に対する大切や信頼という言葉に嘘はないと思うけど、人として見ているかは怪しい。この人、ニニム以外は簡単に使い捨てそう。例え級友であっても、自分自身でさえも。
また、ゼノヴィアの成長も見逃せない点。
妹のフラーニャと違って、失敗して育っていくタイプのようで、何でも吸収しようとする姿勢と折れない心が頼もしい。ただ、前巻から巻代わりヒロインで、ニニムの活躍が少ないのはちょっと寂しいかな。
今回も面白かった。次回は日常回?


ゼノヴィアの胸といいグリュエールの腹といい、この世界の脂肪は我々の世界の脂肪とは別の物質のような気がするw