いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「NNNからの使者 猫は後悔しない」矢崎存美(ハルキ文庫)

離婚して、都内のアパートに一人で暮らす田宮真澄、五十歳。ある日、パート先から自転車で帰る途中、何かをひいてしまった。猫だ。動物病院を連れていくべきか、このまま行ってしまおうか――迷っているところへ別の三毛猫がやってきて、咎めるように鋭く鳴いた。真澄は、仕方なく猫を病院へ連れていき、迷いながらも飼うことにする。一方、拾われた猫は、真澄からある匂いがすることに気づいていて……。人と猫の温かな絆が生んだ大きな変化を描く、涙あふれる物語。


NNNからの使者第四弾。
旦那に離婚を突きつけられ、子供にも見放された一人暮らしの元主婦が、引き取った猫との暮らしの中で、これまでの自分の振る舞いを見つめなおす物語。今回は短編集ではなく、一人と一匹の物語を一冊で。

後悔しない猫と違って、人は後悔ばかりである。その代わり反省ができる。
主人公の離婚の原因に自分の普段の言動を思い返さずにはいられない。
自分の意見を無理やり通したり、人の話を遮ったりや人の話にかこつけて自分の話をしたり、変化を嫌がるわがままだったり。誰にでも少なからずやった経験のあることだろう。それが、度が過ぎたり常態化してしまうと、相手の鬱憤・ストレスとして溜まっていって、この主人公みたいなことに……。
そんな自分の悪意のない悪意にやっと気付いて変化していく主人公の様子が描かれるのだけど、前半のうちに死別が予告されているので、主人公のいい変化がどれも切なさに変わっていく。
死の影が見えてくる後半は、仲直りできたのに残されていない時間、死期を悟っているからこそ振る舞い、人だけでなく猫目線からの別れ。どれもこれもが涙腺を刺激する。鍋パーティは反則だ。
ストレートに泣かせに来てた。ええ、もちろん泣きました。