いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「戦うパン屋と機械じかけの看板娘10」SOW(HJ文庫)

皆に祝福され、結婚式を挙げたルートとスヴェン。しかし、人と機械では生きる時間が違いすぎた。だから、スヴェンは人間になることを決意し、人化の方法を知るマイッツァーを探すのだが、彼は保安部の手によって誘拐された後だった。
マイッツァーの救出に動いたルートたちは、否応にも聖女が画策する次なる大戦の火種に飛び込むことになり――
今はもう英雄でもなく兵器でもない、普通のパン屋店主と看板娘が贈る街角パン屋繁盛記、感動のフィナーレ!!


「驚天動地の九日間」後編にして最終巻。
あらすじに感動のフィナーレという文字を見た時点で嫌な予感はしていたが、案の定駆け足だった。聖女の企みで広げた風呂敷を、矛盾と取りこぼしが無いように一生懸命畳んでいった。という印象ばかりが残る、残念な最終巻になってしまった。
色々な物事にちゃんと決着をつけてくれたことは嬉しいが、スヴェンが人間になるところがメインイベントではないのか・・・。最後の最後におざなりに説明されて、結果もその後のエピローグに放り投げられるとは思っていなかった。
“スヴェンが可愛い”が看板として一番前にあるシリーズだと思っていたし、彼女の苦労と葛藤をここまでずっと読んできたから、スヴェン本人が幸せを噛み締めているところが最も読みたいところだった。そこで「よかったね、おめでとう」と言いたかった。
エピローグも主要メンバーのその後を網羅してくれてはいるが、キャラクター小説のラストとしては淡白で物足りない。
10巻にわたる長期シリーズを締めるラストエピソードとしては、明らかにページ数が足りていないくて、心残りが多い終わり方になってしまった。無念。