いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「やさしい魔女の救いかた」井上悠宇(LINE文庫)

魔法が当たり前に存在する現代世界。ごく少数だけいる魔法使い――魔女は古来より人々の悩みを魔法で解決していた。
ある日、いつも六法全書を小脇に抱えている法律マニアの男子高校生の四方司は、魔法を悪用した疑いで魔女裁判にかけられそうになった見習い魔女から助けを求められるが――。
今も昔も魔女裁判で無罪になった魔女は存在しない。
これは、ルールは人を幸せにすると信じる少年が、魔法は人を幸せにすると信じる少女を救う物語。


少ないながらも魔女が実在する現代。常に六法全書を手元に置くあだ名がベンゴシの変人転校生が、正義の魔女に掛けられた冤罪を晴らすために知恵を絞る物語。
そう、事件解決のために「奔走する」のではなく「知恵を絞る」である。人間の法律に照らし合わせて、魔女の無罪を実証するにはどうすればいいのかを、魔法を直に知って見て感じて考えるのがのがメイン。
なので、思っていたよりキャラの動きが少なく、代わりに口が良く動く物語だった。ミステリで言うと安楽椅子探偵もの、ライトノベルで言うと、その部室内で物語が成り立つ文化系の部活ものタイプの作品。
また、法律は人の幸せを守るためのルールだと信じる正義の人な主人公と、他人の幸せの為だけに魔法を使う心優しい少女の物語でもあるので、読んでいて清々しく優しい気持ちになれるのも良かった。
少年と魔女のボーイミーツガールを期待して読むと少し物足りないかもしれない。理詰めで攻める、思考の過程が読める話や、屁理屈をこねくり回すタイプの話が好きな人にはきっと受ける、そんな作品。個人的には大好物。