いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「きみはポラリス」三浦しをん(新潮文庫)

どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている──。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。


“どこか変”が必ず一つは入っている恋愛小説短編集。
愛の形はもちろん、恋に落ちる瞬間も、恋心の深さと長さも、人それぞれ。様々な歪な恋愛の形を見せてくれる。
また、日々の生活の息苦しさや窮屈さを感じている主人公が多いのも特徴で、自分の恋愛観や日々の不満に、「この人よりは変じゃない」や「こう思っているのは自分だけじゃないんだ」と思わせてくれる、誰もが持つ小さな悩みに救いの手を差しのべてくれているような一冊だった。
三浦しをんさんには『舟を編む』から入って、後は有名どころと新しいのを少々程度で、それほど読んでいるわけではないけれど、話は基本爽やかでどちらかと言えば草食系のイメージがあったので、狂気をはらんだ愛や生っぽい肉欲的な話が出てきて驚いた、というのが率直な感想。
話としては、奥さんのやっていることの変だけど可愛らしい癖と、誠実たらんとする旦那の姿勢の両方で笑顔になれる『裏切らないこと』と、主人公の女性が「好きになっちゃったんだからしょうがない」を全身で表現している『森を歩く』が好み。

ところで、
ちょっと“腐”の気があるのは、他の作品でも出ていたから知っていたが、骨や突起物に並々ならぬ関心を持つ女性が多いのも作者の性癖なんだろうか。