いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スーパーカブ6」トネ・コーケン(角川スニーカー文庫)

高校生最後の日、卒業式。小熊、礼子、椎の3人は窮屈な式典の終わりを合図に、ポケットからカブのキーを取り出した。高校生から大人になるまでの、短い猶予。それを目いっぱい使って、自分たちがこれから暮らす街・東京を知るために3人はバイクを走らせる。有料の駐輪場、密度の高い建物群、夜になっても明るい道。東京の街は刺激的でなにもかもに圧倒されそう。
「道は走りながら決めればいい。だってそのほうが面白いから」
自分たちが見つけた、それぞれの未来。その分岐点はきっとすぐそこ。分かれ道までほんのひと時を、カブとカブで繋がる誰より近い2人の友達と走る、小熊の卒業旅行。


高校で仲良くなった小熊、礼子、椎。3人が別々の道を選び、これから小熊と椎が暮らす東京を知り、お世話になった山梨に別れを告げる。高校生編・完、なシリーズ第6弾。

未知の地・東京をくまなく走り尽くす三人の卒業旅行がメインの回。……まだ大学生にならないのか(^^;
三人が自分のカブに乗って東京を走り回り、カブに乗っている時間が話の大半を占めているので、びっくりするほど会話がない。ラノベとは思えないほど会話がない。
それぞれに自分を持っている三人の旅らしいとは思うのだけど、話の内容が小熊による時間帯と地域差における東京の交通事情の考察がメインになっていて、それを延々と読まされるのは正直退屈。東京人なら道路事情あるあるネタで楽しめたりするのかな? 田舎人は完全に置いてけぼりだった。
その点、最後にもう一度山梨に戻ってからの話は良かった。
お世話になった人への挨拶と、馴染んだ場所や道への感謝、南アルプスへの惜別。やっと卒業編らしくなって感慨に浸れる。中でも恵庭一家の温かさが沁みた。
それにしても、パワフルなお嬢さんたちだ。
行き先はおろか、その日の宿も決まっていない旅なんて不安ばかりが先に立って、自分には逆立ちしても出来そうにないので、彼女たちを尊敬する。憧れはしないけど。
次から今度こそ大学生だろう。新しい出会いが楽しみ。でも、旅に出る礼子はともかく椎は何かにつけて小熊に会い来たり呼び出したりするんだろうな。