いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「吸血鬼に天国はない (2)」周藤蓮(電撃文庫)

「「ハッピーニューイヤー」」
降りしきる雪とともに訪れた新年。吸血鬼ルーミーを因縁と陰謀の中から救い出し、日常へと回帰したシーモア。騒々しい運び屋仕事の中で、二人はぎこちなくも幸福な日々を送っていた。
だがそんな日常も長くは続かない。
マフィアに追われ、逃げ込んできた双子のバーズアイ姉妹。人を傷つけないと誓ったことによって、徐々に迫り来るルーミーの飢えの限界。
緩やかに、しかし確かに平穏の終わりが近づく中で、シーモアたちの前に姿を現す最悪の敵『吸血鬼狩り』。
選び取った幸福の中で、シーモアは更なる決断を求められることになる。
人と人ならざるものの恋物語、第二弾。


日常に戻ったシーモアとルーミーの前に現れたのは、普通の人間のニベルコルと怪物じみた身体能力を持つ妹リンのバーズアイ姉妹だった。バーズアイ姉妹の在り方を見てルーミーとの約束と関係を見つめ直すシーモア。約束とは関係なしに人間への愛着はあるけれど、このままでは飢えてしまうルーミー。今のままでは破綻が確実な中、共に生きる方法を模索する二人の姿が描かれる。

相手のことをよく知らないのに気を使い、すれ違って/逆鱗に触れて、喧嘩を繰り返すお二人さん。
「喧嘩するほど仲が良い」タイプのカップルを目指すのかな、この二人。目指す、なのは恋物語を感じられる甘さはまだ出ていないので。それでも相手の言動で浮き沈みが激しくなっているのは執着の証で、恋の始まりの予感はある。まあ、ルーミーはシーモアの無知よりもセクハラとか失礼な行動に怒ってる気がしないでもないけど。
そんな新米カップルの喧嘩の最中に、イカれた中年ストーカーが登場したからさあ大変・・・にはならなかった。
狂者の妄信的で非生産的な生き方は一つの指針にはなっても、強敵を一緒に倒して仲が進展なんて単純な展開にならない。あくまで己の生き方、生き様を自分で考え抜く。そんな二人の姿勢が硬派で尊い
あまり前に進んだ気がしない、というか前に進むために、間違っていたスタート地点を修正した感じの2巻だった。
新しい仲間と敵が出来たところで次回へ。果たして相容れない存在である二人の仲が進展し、ちゃんと「恋物語」になるのか。次回も楽しみ。