いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「怪盗主夫は幸せな家庭を愛している」つるみ犬丸(メディアワークス文庫)

料理上手な専業主夫の黄太郎と家計を支えるキャリアウーマンの花恋。べったりとろ甘な新婚夫婦。だけども、お互いに言えないヒミツの顔があって……。実はこの二人“伝説の大怪盗”とそれを追う“腕利き捜査官”だったのだ! 家をひとたび出れば知らずのうちに敵と敵。それぞれが思い描くハッピーな未来を守るため、今宵もお互いの正体を知らない夫婦による大捕物が幕を開ける! 二人の幸せな家庭はいったいどうなってしまうのか――!?


夫の家族は怪盗一家「大海の忍」。嫁は大海の忍を追う特殊警備会社のエース。お互いの素性を知らずに愛し合う、熱々夫婦の怪盗コメディ。
状況はキャッツアイの逆バージョンで、物語は「奥さまは魔女」のナレーションが似合いそうな軽くてどこか古風な雰囲気。そんなノスタルジックな気分になるコメディだった。
そんなにハイテクな機材があるならもっとやりようがあるだろうとか、ベタ惚れ同士なのに裏の顔で合った時に変装なしでなぜ気付かないのかとか、設定やご都合主義にツッコミたいところは沢山にあるが、細かいことは気にしたら負け。ノリの良さを楽しむキャラクター小説として読むべき。……自分はそれに気づくまでしばらくかかったので、序盤のガバガバな設定と無茶な状況に戸惑ったんだけど(^^;
慣れてくると熱々夫婦の表の顔と裏の顔のギャップの激しさと現金さが癖になる。真逆な性格のようでいて実はどっちもドSの似たもの夫婦のイチャイチャに、ニヤニヤするやら苦笑するやら。
「えーっ」と思うことが多いのに、最終的には「これはこれで」と笑って終われる。そんな一冊。