いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ロクでなし魔術講師と禁忌教典16」羊太郎(富士見ファンタジア文庫)

魔術祭典の準決勝へと駒を進めたアルザーノ帝国代表選手団。日輪の国のメイン・ウィザード、サクヤとの出会いにより、システィーナは魔術師としての在り方―“汝望まば、他者の望みを炉にくべよ”つまりは、己が望みのために、他者の望みを踏みにじる覚悟を試され―一方、ついにアリシア三世の手記の解読を終えたグレンは、“ルミアの異能”、“天の智慧研究会”、“Project:Revive Life”、そして―禁忌教典の謎に至ろうとしていた。魔術師たちの希望と混沌。魔術祭典決勝を前に、世界を揺るがす前哨の火花が散る!


システィーナの精神的な成長を描く魔術祭典準決勝(長編)、アリシア三世の手記の罠によって歴史を知るグレン(中編)、首脳会議に乱入するあの人(短編)の三部構成でお送りする16巻。
魔術祭典の主役そっちのけで、各国各陣営の思惑と裏工作が入り乱れていた15巻と違い、三つの話がある程度区切られていたので、今回はとても読みやすかった。
その中で、最も面白かったのは魔術祭典準決勝。
やっと横槍や他の考え事が入らない競技の描写に、システィに匹敵する好敵手が現れ接戦になる試合、システィが一皮剥ける姿と、熱くなれる要素が十分。対戦後も、システィの自分の本心の自覚や、サービスシーン(露天風呂)があって、燃えと萌えの両面で面白い。そうそう、これだよ。学生たちの祭典で読みたかったのは。
また、グレンが追体験するアリシア三世の手記も、これまで隠されてきた歴史の断片が、あちこちで少しずつ明るみになる内容で興味深い。相変わらず肝心な部分は隠されているが、今回のこれで情報が整理された気がする。
最後の一つ短編のあの人は、、、いい具合に引っ掻き回していったのはいいけれど、オープニングで掌の上なことが示されてしまっているので、道化師感が半端ない。奴のことだから、あっさり死なないとは思うが。グレンたちの邪魔だけはしっかりしていきそうだな。
魔術祭典は終わらずに次回へ(また横槍が入って実質終わってるけど)。それにしても最後の一行が不穏。今後日常に戻ることはあるのか?