いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「名探偵はハウスメーカーにいる 家づくりは今日も謎だらけ」宮嶋貴以(メディアワークス文庫)

戸建てを購入するのは、一世一代の決断が必要だ。ましてや注文住宅となれば、外装や間取りなど決めることが多く、家族や親族の想いがスレ違ったり衝突したり……。
そこではまさに、壮大なドラマが繰り広げられる。
大手ハウスメーカーに入社し、特別営業本部に配属された平野清は、様々な「家」にまつわる謎と出会う。その謎を、特殊能力をもつ同僚と共に解き明かしていくうち、家族をめぐる、意外で感動的な物語が浮かび上がってくる。


住宅メーカーの新人営業が先輩たちに振り回されながら成長していく物語。
その配属先の先輩たちがとても個性的。
コンビを組む「お嬢」は共感覚の持ち主で、特殊メイクを駆使する「おっさん」に、霊感の強い「王子」など、みんな何かしらの特殊な能力を持っている。その能力故なのかどの人も性格面でもぶっ飛んでいて、その個性だけでも読んでいて飽きない。
また、考え方が今風で肝が据わった婆さんに、再婚の両親の説得にとんでもない方法をとる中三少女など、お客さんも負けず劣らずの個性を見せる。
そんなわけで、家を建てることで見えてくる家族の問題をテーマにした話ではあるものの、人の機微や人情よりも人の個性を楽しむキャラクター小説の色が濃い作品だった。
ところで、新人キヨモリ君の特能は? 最後まで読めば何か出てくるものだと期待していたのに。
結局、家づくりよりも彼が特能推理班に配属された理由が一番の謎だったという。