いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「虚構推理」城平京(講談社タイガ)

巨大な鉄骨を手に街を徘徊するアイドルの都市伝説、鋼人七瀬。人の身ながら、妖怪からもめ事の仲裁や解決を頼まれる『知恵の神』となった岩永琴子と、とある妖怪の肉を食べたことにより、異能の力を手に入れた大学生の九郎が、この怪異に立ち向かう。その方法とは、合理的な虚構の推理で都市伝説を滅する荒技で!?
驚きたければこれを読め――本格ミステリ大賞受賞の傑作推理!


注)アニメ化を期に読んだので感想が変則です(アニメは4話まで視聴)

思った通りに会話劇の楽しい作品だった。
琴子を中心に軽快な会話の応酬が繰り広げられている。特に色々な意味で生々しい表現でボケる琴子に対する、一般人な紗季さんの普通の感性によるツッコミが鋭くて面白い。
全体的にはアニメよりはシリアス寄りな印象。アニメは琴子の表情が豊かなのと、幽霊や妖怪たちがチャーミングに描かれていてかなりコミカル。
んで、本題の「鋼人七瀬」は、
昔は伝聞によって形作られる妖怪の成り立ちをなぞりながら、都市伝説とSNSの相性の良さから急速に像を成していく鋼人七瀬の成り立ち。その人のイメージによって作られた怪異を言葉の力によって、しかも外堀を丁寧に埋めてからの鮮やかな本丸攻め退治する様子。成り立ちにしても退治にしても説得力が素晴らしく、話にのめり込んでしまった。
ただこれ、まるでアニメ向きじゃない。何せネット上のレスバトルだもの。撲殺される九郎を背景にPC画面を映すのか?映えないな(^^; それに鋼人七瀬は背景や話のディテールが最も大事なのに、アニメは説明を端折り過ぎなのも心配。
何はともあれ、小説版は期待通りの面白さだった。特に話の作り上当たり前といえば当たり前のことながら、言葉の一つ一つが大事にされているのが好印象。