いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「虚構推理短編集 岩永琴子の出現」城平京(講談社タイガ)

妖怪から相談を受ける『知恵の神』岩永琴子を呼び出したのは、何百年と生きた水神の大蛇。その悩みは、自身が棲まう沼に他殺死体を捨てた犯人の動機だった。――「ヌシの大蛇は聞いていた」
山奥で化け狸が作るうどんを食したため、意図せずアリバイが成立してしまった殺人犯に、嘘の真実を創れ。――「幻の自販機」
真実よりも美しい、虚ろな推理を弄ぶ、虚構の推理ここに帰還!


琴子ちゃんの西洋人形然とした容姿に似合わない剛腕推理と、人間には容赦なく辛い真実を突きつけていくスタイル。クセになるね。
それに短編だと推理パートが短いので、長編とは違った面白さ。簡潔で分かりやすくなってる推理と、強引で愉快になっている推理とがあるけど、どちらにしても面白い。こうしてみると、布石をいくつも打ってから本命を繰り出す戦法でじっくり攻めた鋼人七瀬の事件は、長編ならではって感じだ。



以下各話事

第一話 ヌシの大蛇は聞いていた
内容:沼に遺体を捨てた女性の真意は?
アニメの第2話+第3話前半の話。
主様細かい。図体の割に。
琴子の台詞にある「犯人が合理的に行動するとは限らない」という事実と、相手を納得させるには真実よりも合理的な説明の乖離が、虚構推理のアイデアの素なのだろうか。



第二話 うなぎ屋の幸運日
内容:鰻を食べに来た男二人が見たものは
推理は犯人の友人がして琴子は幽霊の伝言をするだけという、後から見てみると珍しい話。
琴子が推理しないのもあるのか、犯行の推理よりも老舗のうなぎ屋に一人で来る少女は何者か?の談義の方が面白い。
しかし、うなぎ屋としては得体のしれない少女と殺人犯が来た日を幸運日と言っていいのか?



電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを
内容:寂れた町で起きた魚の大量死事件の真相とは?
寡黙な人ほど怒らせると怖いって話
殺傷能力のある電撃を放ち、陸と海の大物妖を倒し、そのまま壊すと5人を道連れにする人形。それって鋼人七瀬より強いような。



第四話 ギロチン三四郎
内容:純国産ギロチンが使用された殺人事件に隠された真実
これも一つの親の心子知らずか。屑親の所為で人を信じることが出来ずに育った女性の悲しい結末。
琴子の品位の基準は、出版できるかできないかじゃないかな?(身も蓋もない
この話アニメ化されないんだろうか。三四郎の容姿が見たい。



第五話 幻の自販機
内容:都市伝説の幻のうどん自販機が起こす意外なハプニング
一応筋は通ってるけど、食べた物の消化具合をアリバイ工作に使うのは流石に無理があるでしょう。捜査内容が前提の強引な返し技に苦笑い。
残り19個、気になります。