いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「旋律月下」綾崎隼(メディアワークス文庫)

家族でも見分けられない双子、舞原月乃と今宵。月乃は誰からも好かれる朗らかな性格で、妹の今宵は大人びた物静かな少女だった。
月乃に恋をした望月洋平は彼女と同じ大学を目指すが、受験に失敗し、経済的な事情から浪人を両親に禁じられてしまう。
現実の前に頭を垂れた人生と、意志を貫き、親に逆らってでも掴みたかった人生。諦めたはずの人生で再会した今宵と、諦めなかった人生で再会した月乃。
二つの人生を『if』で描く、『月』の恋愛ミステリー。


地元の名家の美人姉妹と転校生による恋愛ミステリー。花鳥風月シリーズ第7弾。
今回は騙されませんでした。残念ながら。
side.Bの前半部分に違和感が多かったのと、初めに登場人物一覧を見た時に閃いた仕掛けがたまたま当たってしまったので。騙された方が楽しく読める場合が多いので、そもそも仕掛けがあるものだとして読まない方が良いことは分かっているのだけど、ミステリ読みの癖だから仕方がない。
でも、side.Bを読み進めると積もっていく主人公に突きつけられる辛く切ない現実という痛み。あれが種明かしの瞬間に一気に来ると思うとゾッとするものがあるので、途中で気付けて良かったと思う面も。主人公に何らかの試練があるのがこのシリーズだけど、今回の主人公・望月君には味方になる友人や家族がいなければ、他にこれといった心の支えもないので精神的にかなりきつい。それでなくても”後悔”がキーワードの、誰もがどこかでは共感できてしまう主人公だというのに。
その代わりなのか、舞原家の主要人物は大抵過酷な運命を強いられる花鳥風月シリーズの中では非常に珍しく、本作の月乃・今宵姉妹は大きな不幸なく幸せを掴めている。おかげで読後感は上々。
彼女たちの笑顔の為に望月君が犠牲になったのかな。彼が頑張った結果と言えないところが少し苦い。この後、望月君も幸せを掴めますように。

あと望月君は兄を一発ぶん殴っても許されると思う。あのナチュラルに人の神経を逆なでしてくるやつなんなの。(#`皿´)キー