いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「少女願うに、この世界は壊すべき ~桃源郷崩落~」小林湖底(電撃文庫)

こんな世界はぶっ壊してやる――
妖狐の因子を持つ少女・熾天寺かがりは、村を襲う妖魔や心ない人間たちから迫害され、この世界の全てを忌み嫌っていた。
 そんな彼女の願いに応じ、はるか昔に自らを封印した最強の聖仙・神津彩紀が覚醒する。五彩の覇者と呼ばれ、全能の薬神でもある彼の姿は――
全 裸 だ っ た 。
「間一髪だったな」流れるように神州刀を振り回し、敵を殲滅した彩紀は告げる。
「どうやら俺はお前の式神、平たく云えば奴隷になってしまったようだ。お前の願いはなんだ──」
 最強の聖仙と灼熱の狐耳少女による、世界変革の物語が始まった。
――人の祈りは、天の法則を書き換える。
第26回電撃小説大賞《銀賞》受賞作!


設定盛り盛りの和風と中華風の中間なファンタジー。最強だけど色仕掛けにはめっぽう弱い主人公と、暴力系ツンデレヒロイン。そんな懐かしい香りがするライトノベルらしいライトノベル
最強主人公でも苦境に陥る回数が多く、沈むべきところで沈みここぞでは盛り上がる、物語のメリハリがあるのが良い。
と、大枠・大筋は良いのだが、新人賞らしく細かいところはかなり粗い。
最も気になるのがキャラクターのブレ。時と場合によって考え方や言ってることが違う。ある意味人間的ではあるのだが、みんながそうなので、キャラクターにあまり個性が感じられなかった。言い方は悪いが、ライトノベルのキャラクターはもっと記号的で良いと思う。 
あと、敵役の最期が微妙。主人公側に課せられる試練の多さと敵側の陰湿さでヘイトを稼ぐのは上手いのに、やられ方があっさりなのでスッキリしきれない。要するにサイコ野郎なら最後までサイコで通してほしいし、最期は華々しく散ってほしい。それが敵役のあるべき姿だと思うんだ
おまけで、OLI因子というのが万能すぎて、ここまで何でもありなら主人公たちの苦労が無意味だったような、と虚しくなったことも付け加えておく。
そんなわけで、悪いところばかりに目が行ってしまうくらいには乗れなかった。雰囲気がツボにはまった人は気にならないんだろうけど、個人的にはイマイチ。