いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ようこそ最強のはたらかない魔王軍へ! ~闇堕ちさせた姫騎士に魔王軍が掌握されました~」永松洸志(富士見ファンタジア文庫)

ぐーたら魔王・アーヴィンと――カリスマ姫騎士・シーナ。
「お前を闇落ちさせてやる!」「くっ……こ……殺せ――!」
……なんてお約束な展開とは掛け離れた、笑撃の理由で闇落ちしてしまったシーナは、そのまま魔王軍に参入!? 堕落しきった軍の改革に着手すると、瞬く間に魔王軍を掌握してしまう!
勝手に改革を進めるシーナに怒るアーヴィンだったが――。「オークたちの合コンを開催するわ!」「「「シーナ様、最高!」」」サボり仲間のオークたちまでシーナ派に寝返ってしまい……!?
姫騎士に魔王軍を乗っ取られ、ぼっちになってしまったアーヴィン。指揮権奪還のため、はたらかない魔王は立ち上がる!

第32回ファンタジア大賞金賞+石踏一榮賞 受賞作


ゆるい魔王軍の様子やシーナの闇落ち理由など出だしこそ完全にコメディのノリだったが、その後は意外と剣と魔法のファンタジーの色が濃い作品だった。
文章はテンポが良くて読みやすく、死力を尽くすバトルシーンは熱い。敵役を最後まで下種に描いてくれているので、爽快感も十分。完成度の高い新人賞作品だ。
但し、何か目を引くところがあるかと問われると、特に無い。ラノベには、特にファンタジアにはよくあるファンタジーで、この手の作品としてはごく普通という印象。
このタイトルなら姫騎士による魔王軍の掌握がこの作品の顔だと思ったのだけど、過程がなくて結果がポンと出されただけだったのにはがっかりした。作者的には本題じゃなかったんだろうけど、ここの過程があればまた違う色が出たような気がする。
あ、ミトラちゃんはかわいかったです。