いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 V」支倉凍砂(電撃文庫)

神をも畏れぬ女商人エーブの謀略を見事に退け、王国と教会による戦争の危機を回避したコルとミューリ。
騒動も落ち着く頃、コルは自らを慕ってくれるミューリとの関係をはっきりさせなければとあれこれ知恵をひねり、ある方法を思いつく。
そして調べもののため、かつて訪れたブロンデル修道院を目指す道中、コルとミューリは行き倒れの少年ローズと出くわすことに。彼はミューリの尻尾が飛び出るほど高名な聖クルザ騎士団の見習い騎士で、世界最強の騎士団が、悪名高い“薄明の枢機卿”のせいで壊滅状態だと訴えてきて――!?
一時の休暇のはずが、またしても大事件勃発のシリーズ第5弾!


「二人だけの紋章を作ろう」
ミューリの想いに応えられないコルが、せめて喜んでもらえるようにと思い付きで言った提案が、思わぬ事件を運んでくるシリーズ第5弾。
あわや戦争かという前回と違い今回はまったりムード。おかげで二人の関係性を見直す時間がじっくり取れて、一応の答えが出るところまで。大きな前進だ。でも、二人の関係を表す言葉、それでいいの? いや、前々からそう思っていたから全く違和感はないのだが、ミューリ本人が納得したのがちょっと意外。
このシリーズはヒーロー・ミューリとヒロイン・コルという認識。そこに4巻辺りからサブヒロインにハイランドが加わった。今回もミューリに話しかけられて嬉しそうなハイランドの後ろに、金色でふさふさな尻尾が振られているように見える。ちなみにエーブは仲間になった元魔王かな。その内また敵に回りそう。
そんな、二人の関係の話は面白かったのだけど、もう半分の本題である聖クルザ騎士団の問題の方は今一つピンと来なかった。
物語好きのミューリは興奮していたけれど、教会改革と前回の戦争回避で支援と仕事がなくなったと“薄明の枢機卿”を逆恨みしている時点で格好悪いし、農業とか狩りとか食い扶持を自分たちで何とかする努力をしている風でもないしで、同情の念が湧かない。逆恨みされたコルに対して「有名税って大変だな」と思ったくらい。まあ、コルが久しぶりに自分の力で何とかしたのと、彼の優しさが発揮されるエピソードとしては良かったかな。
何はともあれ関係性を一つ先に進めた二人。今度はどんな事件が待っているのか、次巻も楽しみ。次は重めのが来そう。