いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「日和ちゃんのお願いは絶対」岬鷺宮(電撃文庫)

海と山と坂の街、尾道。(たぶん)日本の果てで(きっと)世界の果ての、この街で。俺は彼女――日和と恋をした。
ほんわかしていて、かわいくて、どこかちょっと流されがちで。それなのに……。
「――わたしのお願いは、絶対なの」
聞いてしまえば誰も逆らう気になどなれない「お願い」。
彼女の持つその力が、俺の人生を、世界すべてを、決定的に変えていく。そしてすれ違いの果てに、日和が願った結末は――。
の力を持つ日和と、ただの一般人なのにその運命に付き添うことになってしまった俺。
「――でも、もう、忘れてください」
世界なんて案外簡単に壊れてしまうのに。俺たちの恋だけが、どうしても終わってくれない――これは終われないセカイの、もしかして、最後の恋物語


世界紛争に新型ウイルスなど人間社会が終わりに向かっている世界で、広島・尾道を舞台に特殊な彼女と普通な彼の恋模様を描く物語。

現代に似た世界観で「――まるで、世界が終わりたがっているみたい」という帯の言葉が、びっくりするほどしっくりきてひどく印象に残った。逆に言うとそこしか印象に残らないくらいに全体的にふわっとしていた。
セカイ系と呼ぶには現代に寄り過ぎているし、彼女の能力が強力な割にやっていることは中途半端。舞台が尾道である意味も感じられない。そしてなによりセカイ系の恋愛ものには最も必要な、こんな世界でも人を好きになる強い衝動がまるで感じられない。
二人の関係性とか彼女が能力でやっている事とか、彼女のキャラクター性や幻想的な作風を出すためにある程度意図的にぼかしているのだと思うのだけど、その所為で肝心なところまでピンボケしてしまったような。『最終兵器彼女』リスペクトならなおのこと、設定をわざとらしいくらいにドラマチックにした方が、物語が映えた気がする。
そんなわけで、今一つノりきれず楽しめなかった一冊だった。