いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「天才王子の赤字国家再生術7 ~そうだ、売国しよう~」鳥羽徹(GA文庫)

ディメトリオ皇子とその家臣達は、会議の場で困惑していた。
(どうしてこいつがいるのだろう)
会議に参加しているナトラ王国王太子ウェインも思っていた。
(どうして俺がここにいるんだろう)
三皇子のいがみ合いで長らく膠着状態が続いてきた帝国の後継者争い。だが、長兄ディメトリオが戴冠式を強行するため兵を挙げたことで、状況は大きく動き始める。
ロウェルミナ皇女から協力要請を受けたウェインは帝国に向かうが、なぜか一番勝ち目が無さそうなディメトリオ派閥に参加する羽目に!?
「だが、最後に笑うのはこの俺だ」
謀略と戦乱が渦巻く第七巻!


後継者争いが長引く帝国でついに武力衝突が勃発するシリーズ第7巻。
今回は東で帝国編。ロワの策略で最も無能な第一皇子という泥船に乗せられたウェインが、ロワや第二第三皇子を出し抜こうと画策する。
狐vs狸再び。ウェインとロワの化かし合いで、シリーズでも屈指の面白さを誇る2巻の再戦。待ってました! しかも今回は、そこに学生時代の悪友たち=第二皇子派のグレンと第三皇子派のストラングも加わって、帝国士官学校同窓会の様相に。
各陣営の思惑と偶発的なトラブルが絶妙に絡み合ういつもの面白さがありつつ、敵同士になった悪友たちの読み合いが最高に面白いかった。
「アイツならこうしてくるはず」「アイツならここまでやっても大丈夫」と、相手を信頼した上で作戦の立案と実行がなされていく戦況が熱い。相手の性格を把握し、実力を認めているから出来る応酬は、顔を合わせていないのに会話をしているようで、「お前らホントに仲良ーな!」と言わずにはいられない。
もう一つ見逃せないのが、裏で動いていたフラーニャの動向。ミールタース事変の覚醒以降成長著しい彼女だが、ここに来て兄に似たあくどさが出てきて新たな勢力になりそうな予感。あの兄にしてこの妹ありか。
情勢が目まぐるしくて、デレニニムが出る間なかったのだけが残念だが、今回もめっちゃ面白かった。
ヘッポコ皇子の鼬の最後っ屁によってロワが表舞台に引きずり出され、帝国の情勢がますます気になるところだが、次は西側の話のようで。西はすでに魑魅魍魎が跋扈する修羅の国の様相なのにさらに化け物が増えるんです?