いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「出張料理人ぶたぶた」矢崎存美(光文社文庫)

体調が悪い自分の代わりに、出張料理人の作る料理を食べてほしい。そう頼まれて友だちの家に行った里穂は、やって来たその渋い声の料理人の姿にびっくり仰天――しかし、彼の作る料理を食べた時間は、なんだかとっても、特別な思い出になった(「なんでもない日の食卓」)。
料理、パーティ、お掃除もお任せ。頼れる山崎ぶたぶたが、家にいるあなたに幸せをお届けします。


今回のぶたぶたさんは出張料理人。なんてぴったりな職業なんだ。
その時の料理はもちろん、翌朝の朝食や常備菜まで作ってくれて、場合によっては掃除や洗濯まで。うーん、至れり尽くせり。その上、その愛らしい姿と落ち着くおじさんボイスでの癒し効果は抜群、豊富な人生経験で愚痴を聞いてくれたり相談に乗ってくれたりもする……一日おいくらですか? ぶたぶたさんだからリーズナブルなんだろうなあ。その代わり数ヵ月待ちになりそう。
話としては二話目の『妖精さん』がお気に入り。
初め夢かと思う人はよくいるけれど、最後まで夢だと思ったまま幸せを甘受する人は珍しい。どこかふわふわしていていつも以上にファンタジー色が強い話だった
あと変則的で面白かったのが四話目の『通夜の客』。亡くなった祖母の通夜で、子供の頃祖母の家に来ていたぶたぶたさんの思い出を語る青年の話。
再会するパターンは何度かあるが、思い出の中のぶたぶたさんという話の切り口は珍しい。それに出てきた言葉に驚いた。「ビジネスライク」ってぶたぶたさんに似合わない単語だ。言った本人が驚いて出た単語なのだけど。それくらい、ぶたぶたさんがお祖母さん家に馴染んでいたという、相手の懐に入るのが上手いぶたぶたさんらしいエピソード。
今回も癒し成分たっぷりだった。さて、次はどんな職業かな?