いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Unnamed Memory V 祈りへと至る沈黙」古宮九時(電撃の新文芸)

「お前が欲しい。だから結婚を申しこんでいる」
「……は?」
オスカーの呪いを解いたティナーシャは自国に戻り、魔法大国・トゥルダールの女王として即位した。別々の道を歩み始めた二人の決意とは――。そして、呪いの元凶たる『沈黙の魔女』がついに二人の前に現れる。
明かされる呪いの真実、過去へ時を巻き戻す魔法球の存在。名もなき物語に無二の思いが刻まれる第五巻。


様々な困難に“二人”で対処する第二部中編。
開始早々の婚約に喜んだのもつかの間、禁呪で攻めてきた隣国との戦争、魔女の到来、最上位魔族の襲撃と、婚約の幸せを噛みしめる暇がないほど困難が押し寄せる。
攻めるオスカーに、戸惑うティナーシャ。4巻で逆転した攻守が婚約によって歴史改竄前の慣れ親しんだ状態に戻り、安心感を覚える。この二人はこうでないと。とても座りがいい。しかも、前と違ってティナーシャの精神年齢が老成していないので、反応が可愛らしくなっているおまけ付き。二人きりのシーンはニヤニヤが止まらない。
起こる事件の方は、二人の活躍を見守りつつ(ティナーシャは活躍より危なっかしさかも)、どれも少しずつ世界の秘密に触れる話が織り込まれているので、この重厚なファンタジー世界にに浸れるのが楽しい。
中でも開始当初からの謎、『沈黙の魔女』の呪いの真意とオスカーの母の秘密が明かされる、7、8章が興味深い。
沈黙の魔女は表面は素っ気なくおっかないけれど、慈愛に満ちた人じゃないか。改編前の世界では話が通じるの相手じゃないと言われていた記憶が。
それ以上に意外だったのがファルサス前王。大人しい人だと思っていたのに。あの先々代といいファルサス王家はチャレンジャーの血筋だな(苦笑)
あと、印象的なころではオスカーが母を思った一言「自分のことも顧みて欲しかった」ってそれ、周りの人達がみんなが貴方に思っていることだから。ティナーシャにもだけど。どちらにしても、血は争えないって話か。
次はついに歴史を改竄する魔法球エルテリアの秘密に迫る最終巻。
今回、隣国に魔女に魔族にと戦いに明け暮れていたのに、あとがきに束の間の平穏なんて書いてあるんですが……。二人を待ち構えている困難を思うと恐ろしくもあるが、どんな結末が待っているのか次巻が待ち遠しい。