いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「七つの魔剣が支配する VI」宇野朴人(電撃文庫)

エンリコの失踪はキンバリーに衝撃をもたらした。二年連続の異常事態に教師陣も犯人捜しへと動き始め、ついには学校長自らの尋問が生徒へと及ぶことに。
不穏な情勢下で近付く統括選挙の時期。後継者を決めあぐねるゴッドフレイ陣営の前に、因縁の対抗勢力が立ち塞がる。
そんな中、人生を懸けて箒競技のタイム更新に挑むアシュベリーは、大きな壁にぶつかり苦しんでいた。彼女の助けになろうとするナナオだが、ふたりの華々しい活躍は選挙と無縁でいられず──。
一方でオリバーたちの前には、転校生の少年・ユーリィが現れる。軽いノリとは裏腹に高い戦闘能力を持ち、楽しげに校内を探って回る彼の目的とは──。


エンリコ殺しの後、二年生が終わる6巻。
公には生徒会選挙活動が始まり箒競技の大きな大会が開かれ、その裏では二人目の失踪者が出たことで教師たちによる犯人捜しが始まり、それに関係ありそうな謎の転校生が登場。と、コンテンツが多く学内は騒がしいが立ち位置的にはメインイベント後の後処理を含む日常回。まあ、キンバリーの日常が穏やかなはずがないか。
そんな中、最も大きな出来事はオリバーの不調。
エンリコ殺しの後遺症で自らの体を上手く制御できず失敗を繰り返すオリバー。これまで“優等生”だったからあった余裕と自信が剥がされたオリバーは、脆かった。復讐の時でも常に冷静なイメージだったので、ここまで情緒不安定で泣き虫になるは意外だ
こんな状態でこの先大丈夫か? 復讐相手はまだまだいるのに更に枷を増やすのか?戦々恐々としたが、そんな彼を救い出したのはこれまで培ってきた友情だった。こういう青臭いことをストレートにやってくれる作者が好き。
しかし、ナナオに包容力を感じることになろうとは。それはシェラの役目だと思ってた。
やり方が手を繋いで隣に居たり、童心に帰って一緒に遊んだりなので、母性というか「ママみ」を感じるところまで行かないのがナナオらしさか。
ただ、キスは濃厚だったけど。1巻は「ご褒美はほっぺにちゅー」なんて可愛いこと言ってた彼女はどこへ? ここ数巻、その手の表現が肉欲的というか下半身に寄ってる気がするのだが。これも初心だった彼らがキンバリーに毒されている表現の一つなのかなと思ってみたり。
日常回で繋ぎの回でありながら、掛け替えのない友情と身を焦がす愛情が交差する熱い一冊だった。面白かった。
箒の先輩たちの顛末はオリバー達に何を見せたのか、三年生になった彼らの活躍に期待。