いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ロクでなし魔術講師と禁忌教典17」羊太郎(富士見ファンタジア文庫)

魔術祭典決勝を襲った最大の悲劇。セリカ=エリエーテ大競技場では“天使の塵”の末期症状による死亡者が生まれていた――。誰もが動揺する中、混乱に乗じて動き出したのは、アルザーノ帝国女王府国軍大臣アゼル=ル=イグナイト。帝国を牛耳るべく、クーデターを引き起こしたアゼルは、イヴに対し、自分のもとへの帰参を命じるのだが……「終わらせなければならない……それがイグナイトの責務だから」ついにイヴは、公爵家との決別を決心し、グレンと共に女王軍の指揮を執ることに。
立ちはだかるのは、最低の父と最愛の姉。イグナイトのたどり着く道は――。



アゼル=ル=イグナイトのクーデター、帝国軍が割れる第17巻。
他国で内乱するなんて、なんて迷惑な人たちなんだ……という素のツッコミは置いといて
ハイライトは冒頭のジャティス。天の智慧研究会に一杯食わせて即退場。美味しところ持って行きやがって。遠くに飛ばされていたけれど、またおいしいところで戻ってくるんでしょ? 知ってる。
その後は「イブ、頑張る」「グレン、口説く?」「三人娘、イヴを正しくライバルと認識する」の三本です。といったところ。
……え?クーデターはどうしたかって?
シリーズのポディション的には中ボスクラスだったとは言え、イグナイト父が予想以上、想定外に無能で小物だった為に、本来のメインイベントが盛り上がらなかった。
文章のバトル、特にこのシリーズのバトルシーンは、双方に意地とか生き様とかそういうものが掛かっているから熱くなるのに、イヴやグレンが自分の正義を貫いて必死になって戦っても、相手が癇癪を起こしている子供レベルのメンタルでは脱力してしまう。アニメになれば戦いは激しく画面は紅く眩しい派手なシーンになったかもしれないが、文章であれなら物言わぬ魔物と戦っていた方が盛り上がる。
また、イヴの有能さを表す為に一部戦記ものっぽくなっていたが、敵将があれでは。ギリギリの勝利で盛り上がるわけではなく、かといって相手の方が戦力があるのでそれなりの被害はあって楽勝というムードもない微妙な感じになってしまった。
辛い目にばかりあっていたイヴには悪いけど、イグナイト父の残念さだけが際立っていた。まあ、イヴはグレンが慰めてくれたからいいよね。
これで一旦事態は収束、帰還かと思ったら、状況はさらに過酷な状態に? これはもう学園コメディに戻るのは無理そうだ。