いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「超能力者とは言えないので、アリバイを証明できません」甲斐田紫乃(宝島社文庫)

大富豪・蓮丸貴世彦の遺言で孤島の館に集められた一族。遺産分割について揉めていた一同には緊張が走る。そんな時、遺言書が盗まれさらには弁護士が姿を消した。捜索の結果、血の付いたナイフと海に浮かぶ上着が発見される! 殺人事件か、それとも事故か。疑心暗鬼になるなか、不可解な事件が次々に起きて――!? まるでよくあるミステリー。おれがしょーもない超能力を使えること以外は! 秘密を抱えた人々が織りなす、悲喜交々の群像ユーモア・ミステリー!


遺産相続でもめる一族、電話は繋がらずネット環境もない離島、紛失する遺言状、血の付いたナイフと上着を残し行方不明になる弁護士、台風で救助は数日先。絵に描いたようなテンプレシチュエーションの中で、特別なことがただ一つ。それは、一族の誰もが実用性のない、誰にも言えない“しょーもない”超能力を持ていること。
秘密を抱えているゆえにより深く疑心暗鬼に陥っていく、群像劇ミステリ。

手垢が付きまくったベッタベタなシチュエーションを用意してまで強調する“しょーもない”超能力を、登場人物たちが、または著者がどう上手く使うのかを楽しみにしたのだが、、、
信湖の能力だけ有能すぎません? 心を読む系の超能力は他の人も持っていたけど、彼女だけ無制限で無条件。しかもそれをフルに活用しての事件解決してしまうのは「そりゃないよ」という感想しか出てこない。“しょーもない”とは何だったのか。
発想は面白かったし、あちこちスパイと裏切り者だらけの性格が“しょーもない”一族に苦笑しながらも事件がどう転がるのかワクワクした。それだけに後半のがっかり感は強い。やっぱりミステリに超能力は出すもんじゃない。