いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ドラキュラやきん!」和ヶ原聡司(電撃文庫)

太陽の光を浴びると灰になってしまう存在、吸血鬼。夜しか活動できない彼らだが、現代では割と問題なく生活していた。
そう、なぜなら“夜勤”で働くことができるから――。
虎木由良は現代に生きる吸血鬼。バイト先は池袋のコンビニ(夜勤限定)、住まいは日当たり激悪半地下物件(遮光カーテン必須)。人間に戻るため、清く正しい社会生活を営んでいる。
なのにある日、酔っ払いから金髪美少女を助けたら、なんと彼女は吸血鬼退治を生業とするシスター、アイリスだった! しかも天敵である彼女が一人暮らしの部屋に転がり込んできてしまい――!? 虎木の平穏な吸血鬼生活は、一体どうなる!?
はたらく魔王さま!』の和ヶ原聡司が贈るドラキュラ日常ファンタジー!


吸血鬼や狼男などファントムと呼ばれる怪物が人間社会で隠れて暮らしている現代日本・池袋。コンビニの夜勤バイトに精を出す吸血鬼・虎木のアパートに、ファントムハンターのシスター・アイリスが転がり込んでくることから始まる物語。
もっとコンビニバイトが前面に出て来る、化け物退治も大事だけどまずは普段のお仕事から!という話になるのかと思ったら、思いの外普通の現代ファンタジーだった。成り行きで手伝うことになった化け物退治がメインで、働いている姿はほんの少し。それも事件の手掛かりや伏線のための描写ばかり。
それでも、出会って初めての食事がカツカレーとカップラーメンだったり、睡眠用棺桶代わりのお風呂の有用性を力説したりする庶民臭さはやっぱり和ヶ原作品。落ち着く空気感。
今のところの押しポイントは、素直にラブコメを楽しめるところ。
真っ当に可愛く、真っ当にヒーローに好意を抱いているメインヒロインに、程よく仲の悪いライバル、やれやれ系っぽい主人公の三角形が、くどくもなくギスギスもしていない、いいバランス。それとアイリスの極度の男性恐怖症が吸血鬼ゆえに緩和され、虎木が唯一まともに喋れる男性という特別感もいい。どこぞの魔王と勇者は出会いが最悪だったからなあ。
今後は色々と匂わせていった二人の過去が明かされるにつれ、二人の関係性がどう変わっていくかが楽しみ。