いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「さよならの言い方なんて知らない。4」河野裕(新潮文庫nex)

香屋歩は臆病者を自認する。知らない人に話しかけられるどころか、すれ違うのすら怖い。そんな彼が殺し合いを是とする架見崎に招かれたとき、どんな行動をとるか。逃げるのか。隠れるのか。泣き叫ぶのか。否。少年は立ち上がる。彼はいつだって、恐怖の前提と対峙する。PORTを脱退した王者ユーリイ。トーマの計画。混戦の果てに浮かび上がる世界の秘密とは。激動の青春劇、第4弾。


香屋が自らの意思で表舞台に躍り出る激動の4巻。
……激動、だったんだろうか。話が大きく動いたようなそうでもないような、不思議な感覚。
架見崎という枠組みで見ると、大手チームのリーダーの移動や中小チームが淘汰されていく展開、そしてキネマ倶楽部のリーダーの交代と、大きく勢力図が変わる文句なしで激動の話だった。各地での戦闘も激しく、局面局面で見るとかなりエキサイティング。「チーム」が意味を無くし、仲間意識もしくは友達関係が大きな意味を持ち始めたところも多きな変化だろう。
一方、香屋、トーマ、秋穂の幼馴染みを中心に見ると、秋穂の位置が物理的に変わっただけの気もしてくる。
この物語は、みんながFPSやっているフィールドで一人詰め将棋をしている香屋という異質な存在を見守る話だと思っているのだが、今回の動きがその香屋の掌の上から、はみ出しそうで結局はみ出なかったので、話が動いていないようにも見える。おかげで相変わらず香屋の“気持ち悪さ”は際立っていたが。
それでも幼馴染み三人の関係性がよりよく見えたのは進展か。三人してあとの二人に相手に劣等感があり、女の子二人は自分は負けると思っている。この停滞した関係が変わる時が、この物語のゴールが見える時なのだろう。
あと進展といえば、最後に運営側のに揺らぎというか人間味が見えたのが、ある意味最も大きな変化かも。
彼らはトーマの提案にどう応えるのか、この先は架見崎はどうなってしまうのか。次回も楽しみ。