いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「午後九時、ベランダ越しの女神先輩は僕だけのもの」岩田洋季(電撃文庫)

夜9時、1m。それが僕と女神との秘密の時間と距離。そう、僕の家の隣には女神が住んでいる。
「旭くん、わたしはいったいどうしてキミのことが好きなんでしょうか?」
ベランダ越しに甘く問いかけてくるのは、完璧美少女の氷見夏菜子先輩。冴えない僕とは一生関わらないはずだった。
だけど、僕が彼女の家の隣に引っ越してきたとき、そして彼女が僕のことを好きだと告げた瞬間に始まったんだ。
可愛すぎる先輩と、大切な時間を積み重ねていく、かけがえのない日々が。
この世で僕と女神先輩しかまだ知らない、近くて遠いひそやかなベランダ越しの世界のなかで――。


引っ越した先のお隣には同じ高校で女神と呼ばれる先輩が住んでいて。夜、ベランダ越しに逢瀬を重ねる高校生の恋の物語。

後半、化けた。
初めのうちは「先輩あざといわー」と思いながら読んでいた。
学校では清楚でお淑やかなのに、自分に対する時だけはイタズラ好きのお姉さん。間接キスの挑発に、猫耳コスまでしちゃう。これをあざといと言わずしてなんと言う。
でもそれが、学校での女神の変化や周りの人の反応から先輩の「好き」が本気なんだと分かってくると、どんどんと可愛く映るようになっていく。
一方、主人公の方も彼女の翻弄されるばかりで、作者の願望垂れ流しラブコメか?なんて失礼なことを思ったりした。
しかし、こちらも彼女のことを真剣に考えだすと様子が一変。特に二段階の告白シーンは、どれだけ彼女が好きか分かる一回目、彼が惹かれていく、いや二人が惹かれあっていく過程が分かる二回目、どちらも「好き」が溢れていてニヤニヤと言うよりキュンキュンする。岩田先生の書く男の子はみんな誠実で一生懸命で好ましい。
クラスメイトに一人キ〇ガイ女子がいて、作品の雰囲気を度々ぶち壊していくのが残念だけど(あの子は自分たちで解決しないで警察に相談した方がいいぞ)、それを差し引いても大事に育まれた一つの恋を描く純愛物語でとても良かった。