いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「安達としまむら9」入間人間(電撃文庫)

安達と出会ってからの一年が割と濃いから、過去が遠くなっているのを感じる。良くも悪くも、安達は印象的なので他の記憶を上書きしてしまう。わたしはいつか、安達との過去だけで埋め尽くされるのかもしれない。

私には思い出というものがおよそ欠けている。そして、私には今にしかしまむらがいない。少なくとも、今この時は。一年前はまだちゃんと覚えていて、そこにある。だから昔じゃない。私は、いつかしまむらと過去を過ごせるだろうか。

安達と出会う前のしまむらと、しまむらと出会ってからの安達。少しずつ何かが変わっていく。そんなお話。

表紙を筆頭にアニメ開始に合わせて無理やり出した感があちこちにあるけど、本文はちゃんと書き下ろしだから大丈夫!てか表紙誰だよ。せめて顔を似せる努力をしてください。



半分は過去編、半分はその後。本編分量の半分は日野と永藤の話なのでタイトルが『日野とながふじ』でも違和感はない。
過去編はしまむらの過去、日野の過去、永藤の過去。安達の過去がないのは、しまむらと出会う前のことなんて安達にとって何の価値もないものだからだろう。一人の時は楽しいも悲しいも辛いも感じてなさそうだもんな、あの子。
話のない安達は置いといて、今の飄々ガールの面影がないしまむらに対して、昔からあまり変化のない日野、永藤の対比が面白い。日野と永藤は初見でぴったりとはまっちゃったんだろうな。しまむらの変化は安達との出会いか? いや、反抗期が過ぎて、母に似てきただけの気がする。
母と言えば、予想外かつ面白かったのが『安達としまむら』ならぬ『安達と島村』。二人の母親の出会いとその後のやり取りが描かれる。
どちらもこの母にしてこの子ありと思わせるお母さんたち。しまむら母、素面であれとか強すぎるだろ。一緒に居たら楽しそうだけどあんまりお近づきになりたくない気もする不思議な人。安達母は尖がったまま大人になっちゃた人かな。
予想外に9巻が出たけど次もある? 16年後何があるのかが気になるが、語られないだろうなあ。