いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「探偵くんと鋭い山田さん2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる」玩具堂(MF文庫J)

山田姉妹と戸村に今日も奇妙な事件(相談事)が寄せられる。我が校の卒業生でもある副担任のさぁや先生の依頼は、彼女が高校生のときに起きた「原稿消失事件」。文芸部の部誌に載るはずだった直前に消えた状況は、確かに不可解で……? あいかわらず平常運転で絡んでくる雨恵と雪音の山田姉妹につつかれながら、またも俺は矢面に立たされるのだった。
だんだん雨恵と雪音の性格も把握してきた2人の距離感は……やっぱ、近すぎるよね!? そして赤面してるよね!? 可愛くて鋭い2人の山田さんと俺とで解き明かす、ちょっと甘めの学園ミステリーラブコメ、第二幕!「よし! プールで推理しよう!」ええっ!?


ある教室の後方窓際の席には3人の探偵がいる。戸村くんと山田姉妹、どこかズレた少年少女たちの日常ミステリ第2弾。
2巻も文句なしに面白かった。
プレイヤー名を名乗らない奇妙なオフ会や6,7年前の消えた原稿の行方など、ありそうでなかった新鮮な切り口の謎と、しっかりした犯人当てのロジックで、日常ミステリとしての面白さは十分。
それでいて三人が重要視するのが動機面なので、人の機微に触れていく物語としての面白さもある。時に人の触れられたくない部分まで暴いてしまう謎解きの負の面を、善良でありたい戸村、楽しくありたい雨恵、正しくありたい雪音の三人で上手くバランスをとって、軽く読めるライトノベルらしい話に仕上がっているのが本当に見事。特に今回は、自己形成やアイデンティティなど根底に『個』に対する重めのテーマが流れていたが、依頼者(もしくは犯人)を三人の“得意分野”で説得して後味のいい所に着地させている。そして何より三人が(特に雨恵が)楽しそうというのが良い。
ブコメとしては山田姉妹のイタズラやヤキモチに戸村くんがそつなくこなし過ぎでちょっと薄味かなとは思うけど、この辺りは好みの問題だろう。
最近ではここまで丁寧に作られている作品は貴重なので是非とも続いて欲しいのだけど、2巻を出すのに紆余曲折あったみたいだし今回の締めは綺麗だし、続刊はかなり望み薄かなあ。