いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スーパーカブ reserve」トネ・コーケン(角川スニーカー文庫)

間もなく始まる大学生活。町田の新居に荷物を運び入れた小熊は、一息ついて小さな縁側に置かれた愛車のカブを見た。中古で買ってから2年弱。毎日の手入れのおかげでエンジンなどの内蔵機関はとても良い状態だが、よく見ればあちこちに傷がある。一緒に過ごした軌跡のような傷跡をなぞりながら、小熊はこのカブを手に入れた高校二年からの出来事を思い出す。椎のリトルカブの納車を礼子とお祝いしたこと、3人で遊びに行ったスワップミート、恵庭家でささやかにご馳走を食べたクリスマス。そんなに経っていないのに、何故か懐かしい。大学入学前に、カブと共に振り返る山梨で過ごした珠玉の日々。


大学生になったばかりの小熊が思い出に浸る、という形で語られる6巻までの本編を補完する短編集。二年生のエピソードもあるが、三年生後半の本編では語られなかったエピソードがメイン。
『カブのある日常』が描かれていた。そうそう、これだよ。
孤立した集落を助けたり、九州までいったりの無理な遠出や過度な冒険がなくて、久しぶりに地に足の着いたスーパーカブと小熊のイメージに合う物語が読めた気がする。シリーズが長く続くとやることがなくなってくるのは分かるから、冒険が悪いとは言わないけれど、やっぱり読みたいのはスーパーカブらしい堅実さだ。
あとは元々趣味丸出しの物語ではあるけれど、ウェアや装備のバイク関連だけでなく、小物や食べ物なそいつも以上に趣味に走ったものが出てきたのが好印象。知る楽しみ、調べて「へー」ってなる楽しみがある。
ところでプロローグ・エピローグでやっと大学生になったけど、大学編はやるんだろうか?