いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「キノの旅 XXIII the Beautiful World」時雨沢恵一(電撃文庫)

「あの箱ですか? 私達の永遠の命を守ってくれるものですよ!」国に入る前に、キノとエルメスは答えをもらいました。答えが全然理解できなかったので、キノが訊ねました。背広を着た入国審査官は、とても若い男でした。まだ二十歳前に見えました。彼は、それはそれは嬉しそうに、手続きそっちのけで説明してくれます。「あそこには、たくさんの国民達が眠っています!」「眠っている……?」キノが首を傾げました。「つまりまさか――」エルメスの言葉を、「墓地じゃないですよ!」入国審査官は笑顔で遮りました。「みんな生きています! ただ――」キノが反対側に首を傾げました。(「眠る国」、他全11話収録)


今年は11月に登場の20年目のキノの旅
教訓や風刺がピリリと効いたストーリーとウィットに富んだオチ、安定安心の“いつもの”。
そういうキノの旅らしさが最も出ていてお気に入りなのが「愚か者は死んでもいい国」。どこぞの体制やネット社会へのほのかに感じる風刺の入れ方といい、オチの笑える脱力感といいこれぞキノの旅
あとは見開き口絵の「ペンの国」+口絵最後のページの言葉(=帯の言葉)。あるかもしれないSNSの末路が見える。ホントこの国のように規制されなければいいけど。話とは関係ないけど、ショーケースを見上げるティーがかわいい。
逆に意外性があったのは「ロボットのいる国」。過ぎた技術や制度が身を亡ぼす国が多い中で、ここの国の人たちは勤勉で善良。これまででここの国民性だったら、悲しい/苦笑いなオチにならなかった国がいくつあるだろう。話としては暇は暇で落ち着かなくなる主に貧乏性の人の性を謳っているような気もするけれど。
もう一つ忘れちゃいけないのが久々にキノの本気が読める「狙撃犯のいる国」。ここまで真面目に戦闘するの何年ぶりだろう。今回最も長くて読み応えのあるガンアクション&サスペンス。
さて今回のあとがきは、、、割と普通? いやこれで普通と思ってしまうのはもう末期状態かもしれないw