いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「レッドスワンの死闘 赤羽高校サッカー部」綾崎隼(メディアワークス文庫)

雨天の決戦が続くインターハイで、舞原世怜奈率いる赤羽高等学校サッカー部は、研ぎ澄まされた新戦術で、鮮烈な軌跡を描いていく。
そして、ついに彼女が願い続けた赤と青、レッドスワンとセレストブルーの決戦が実現する。
仲間たちの想いを受け、高槻優雅は再び羽ばたけるのか。高校サッカー界、最強のチームはどちらなのか。最高の舞台で、少年たちの最後の死闘が、今、始まる。
レッドスワンサーガ、セカンドシーズン、堂々完結!


凋落した元名門校の復活を描いた青春サッカー小説、完結編。
衝撃のラストからの続き、世怜奈先生が優雅の告白を正しい意味で認識したことに驚き、優雅が恋愛事で戦術を繰り出したことにさらに驚く。でもやっぱり恋愛音痴で不器用で。相手に何かを求めるような二人じゃないから、くっ付きさえすれば上手くいきそうなんだけど、そこまでいく道程は険しそうだなと。
その後も恋の嵐が吹き荒れていた。いや、これは嵐なんて普通の表現でいいのか? 愛の形は人それぞれといっても、恋愛音痴組がまともに感じるくらいに歪んでいるのはどうなんだ。謙心も大概だったけど七海さんは純粋に怖い。下手なホラーより怖い。
まあ、そんなことより本題はサッカーだ。
死闘と銘打たれた市条戦がもちろん今回のハイライトにしてクライマックス。
いつも通りの試合描写=戦術と心理描写から来る臨場感と手に汗握るハラハラ感に、この試合に懸ける熱意と、相手監督とスーパーエースが放つ不気味さが加わって緊張感は過去最高。贔屓のチームや代表の負けられない試合を観る時のような心境になった。
本当はワンプレーワンプレーに感想を書きたいが(特に今回は伊織に対して)、結果はもちろん経過だけでもネタバレになりそうで、そうするとこの小説の面白さが半減しそうで怖いのでしない。ただ一つ強く感じたのは「迷い」の怖さ。迷いがほんの一瞬判断を遅らせ、その一瞬がチャンスになり致命傷になるサッカーというスポーツの怖さを思い知らされた。
ああ、ここで終わりなのか。まだインターハイ、せめて選手権までと思わずにはいられない。
想像の余地がある終わり方は嫌いではないし、全てを語ってしまうのは野暮だと思うけれど、それでも彼らのこの先をもっとずっと読んでいたい。そう思わせてくれる、熱い青春の物語だった。