いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「涼宮ハルヒの直観」谷川流(角川スニーカー文庫)

初詣で市内の寺と神社を全制覇するだとか、ありもしない北高の七不思議だとか、涼宮ハルヒの突然の思いつきは2年に進級しても健在だが、日々麻の苗木を飛び越える忍者の如き成長を見せる俺がただ振り回されるばかりだと思うなよ。だがそんな俺の小手先なぞまるでお構い無しに、鶴屋さんから突如謎のメールが送られてきた。ハイソな世界の旅の思い出話から、俺たちは一体何を読み解けばいいんだ?
天下無双の大人気シリーズ第12巻!

9年半ぶりなんだそうな。



初詣(短編)、学校の七不思議(中編)、VS鶴屋さん(長編)の三本編成で送る大ボリュームの涼宮ハルヒシリーズの最新刊。
ハルヒが珍しく清く正しいラノベヒロインをやってる初詣の短編を過ぎると、重厚で濃密なミステリの世界が広がっていた。
ハルヒが何かしでかす前に北高の七不思議をでっち上げる『七不思議オーバータイム』はミステリとホラーの親和性の高さを、小泉解説と実践で証明するような話。鶴屋さんから旅先であった謎の解明を挑戦される『鶴屋さんの挑戦』は小泉、留学生T、長門の傑作ミステリ談義と、鶴屋さんからの3つの問題で叙述トリックについて語る話。
特に『鶴屋さんの挑戦』の方は、三人のミステリ談義で「アンフェアではない」ことを十分にアピールしてから、鶴屋さんの仕掛ける叙述トリックを一つずつ丁寧に解説しながら紐解いていく、小泉流(作者流?)のミステリの読み方講座兼叙述トリック解法講座とでもいった様相。終盤二転三転する展開も実にミステリらしく、ストーリーもトリックも丁寧に練られた物語という印象。解説部分が長いので、若干小泉を使って作者がミステリ談義がしたかっただけのような気がしないでもないでもないが、、、ミステリ好きとしてはとても楽しく有意義な時間だったので何も問題はないな。
と、非常にミステリに寄った内容だったイコール不思議要素はほぼ無しのため、ハルヒが大人しく、みくるや長門の台詞もかなり少なめとキャラクターを感じることは少なかった。
そんなわけで、涼宮ハルヒシリーズとして面白かったかと言われると何とも言えないところだが、ミステリ好きとしては文句なしに面白い一冊だった。