いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「〆切前には百合が捗る」平坂読(GA文庫)

「〆切直前に遊ぶゲームって、なんでこんなに楽しいのかしら……」
家出少女の白川愛結は、従姉妹の白川京の紹介で、人気作家、海老ヒカリの世話係&監視役のバイトをすることになる。原稿をサボってゲームをしたり釣りや旅行に出かけるヒカリに翻弄されながらも、そんな日常に幸せを感じる愛結。一方ヒカリも、突然始まった愛結との同居生活の中で、これまで感じたことのない気持ちが芽生えるのだった。社会から排斥された少女と、容姿才能家柄すべてに恵まれながらも自堕落に生きる小説家、二人の関係の行き着く先は……? "普通"に生きにくいすべての人に贈る、珠玉の日常系ガールズラブコメディ、誕生。


作者の前作『妹さえいればいい。』と同じ世界で、そこそこ売れてる作家と家出女子高生の奇妙な共同生活を描く百合百合ラブコメディ。
二人の関係が白川京の担当作家と従妹ということで、京だけが前作から引き続きの登場人物。
特技が他社作家の引き抜きって京さん、(業界的に)恐ろしい魔性の女になってしまって。この世界のG〇文庫ヤバいんじゃ?
それはそうと、メインの登場人物は二人。というか京を入れて三人以外はほぼ出てこない。
一人は京の従妹、同性愛、性的マイノリティに悩む女子高生白川愛結。
発端はクラスメイトに拒絶されたことながら、世間の目よりも自分の中の常識と自分の欲望の乖離に悩んでいて、認められたいではなく拒絶や同情をされたくないという考えが先にくるのがなんだかリアル。
もう一人は作家・海老ヒカリこと海老原優佳理。
恵まれた環境で育ち、人に執着出来ない事を気にしつつも、その性質に関しては諦めというか達観している。また、作者の作家としてのスタンスをヒカリに代弁させているように感じるところがいくつかあって、そういう意味でも興味深いキャラクター。
と、なんだかセンシティブで真面目なことばかり書いてしまったが、基本的にはダメな大人とドロップアウト女子高生のお気楽で自堕落な日常が描かれるので、ゆるく楽しく読める作品。まあ片や〆切という現実から逃げ、片や高校生活から逃げているので、非日常のような気もするが。突然百合百合しくなる温泉旅行編が大変よろしゅうございました。ぐへへ←
予想外に近しい関係にはなったけれど愛結の葛藤が解消された訳ではなく、優佳理は愛結に執着を見せる自分の心に戸惑っている状態なので、この先一悶着二悶着ありそう。二人の生活と悩みがどこに着陸するのか、見守っていきたい。