いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「谷中びんづめカフェ竹善4 片恋気分の林檎フェス」竹岡葉月(集英社オレンジ文庫)

「私が好きなのは菱田さんです」勢い余ってセドリックに告白してしまった紬。気まずさにいたたまれない日々を過ごしていたある日、ネットに竹善の悪評が書かれているのを見つけてしまう。憤慨した紬は書き込み主の正体を探るが、犯人は意外な人物で!?
林檎の色づく季節に、心も体も温まるとっておきのメニューをどうぞ。谷中を舞台に贈るおいしい下町人情物語。


谷中にある瓶詰専門の変わったカフェに集う人たちの人間模様を描く物語、第4弾。
紬の告白という衝撃のラストからの続き。さあ、結果は……ああ、やっぱりか。まあ、そうだよなあ。
セドリックは亡き奥さんの思い出を抱え子供までいる自分は紬には相応しくないと思い、紬は奥さんの思い出を上書きして居座るつもりはさらさらない。二人とも優しいからこそ、もう一歩が踏み出せない状態なのが温かいけどもどかしい。それに、お互いに相手の幸せを思うがゆえに、自分が思い描く想い人の幸せな姿の中に自分自身は居ないという現実が何とも切ない。お父さんは好印象だっただけに残念だ。
でも、そこで過度に凹んだり萎まないのが我らが紬嬢。一泣きで切り替えるこの強さと割り切った性格がやっぱり好きだ。それに今回は大学の友人のミチルと亜子の存在も大きかった。あの二人のノリの良さと明け透けで気持ちいい会話からするに、コミュ力には差があっても、割と類は友を呼んでいると思うんだけど。紬は認めないだろうな。
さて今回の瓶詰め料理は、前巻で漬けた梅各種が大活躍。自分で漬けたものを楽しむ、保存食ならではの楽しみ方だ。中でもクリスマスパーティーで出てきた角煮は反則だ。どう考えても旨そうな料理法に加えて、クリスマスっぽくないところが自分好み。
ラストが綺麗すぎて不安になる終わり方だったけど、何処にも最後とは書かれていないから続刊を気長に待とう。虎太朗の恋心には結局がついていないしね。