いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「プロペラオペラ3」犬村小六(ガガガ文庫)

極東の島国・日之雄。その皇家第一王女・銀髪の美少女イザヤは20才。同い年で幼なじみのクロトは昔イザヤにとんでもない“狼藉”をはたらき皇籍剥奪された曰く付き。しかしふたりは、第八空雷艦隊司令官と、その超キレ者参謀となり国民の人気を独占する! 互いを意識しても素直になれないイザヤとクロト。そして、ふたりを見守る姉のような皇家内親王リオにも転機が。飛行戦艦「村雨」艦長への就任である。イザヤとクロトとしばし別れねば…。だがリオには、彼女のためならいくつでも命を捨てたいファン、もとい乗組員たちがついている!


さあ、時代が世界がそして作者が牙をむき始めました、な3巻。
流石は太平洋戦争がモチーフのこの作品。何処の状況も聞けば聞くほど日乃雄が絶望的な状況で、いつものバカ騒ぎも虚勢と空元気の色が濃くなっている。クロトがイザヤの女の部分に反応し始めているのも、嫌なフラグにしか感じない。そして、最大の嫌なフラグはリオと別れ離れになったことだったのだが……。
今回、戦闘に関してはイザヤの特殊能力が温存できたくらいに、これまでで一番苦戦の少ない空戦だった。イザヤの艦隊に限っては。囮となったリオの乗る「村雨」の粘りのおかげなのは分かっているのだが、小国を侮らず慎重な敵将に奇策まで見破られ連合艦隊大ピンチ!な展開だったのに、その後の絶望が少なかったのでやや拍子抜け。と感じるのは過去2巻で毒され過ぎだろうか。とりあえず村雨の奮闘を目立たせるためにも、中盤の敵司令部の描写がもっとあってもよかったかな、とは思う。リオは……速夫くんが頑張ってくれたことを信じるしかない。
不安を煽るいくつもの回想、自信家のクロトが鼻っ柱を折られそうな状況の数々、そしてリオの顛末。次はイザヤだぞという明確なメッセージが感じられて次が怖い。この巻もあらすじの時点で嫌な予感しかしなかったが、4巻を読むのには更なる勇気が要りそうだ。