いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「声が出なくなったので、会社を辞めて二人暮らし始めました。」神戸遥真(メディアワークス文庫)

仕事は辛くて友だちも少なく、元カレはクズ。ストレスが原因で声が出なくなり会社を辞めた絵麻。無職になり祖母の遺した家でずぼらな引きこもり生活をしていたが、突如親友の弟・空が現れる。
「俺がここに住むの、どうですか?」空の強引な提案で一緒に暮らし始める二人。空の手料理やお世話により、絵麻の生活は改善されていくが、空には秘密があって……。
『おいしい』『ありがとう』『好き』――声が出なくても想いは文字《カタチ》にして伝えたい。優しく言葉を綴る恋の物語。


ストレスが原因で声が出なくなってしまったOL・絵麻が、仕事を辞め引きこもっていたところに、元同居人で親友の弟・空が転がり込んでくる。

絵麻さん、空くんに捕まって良かったなあ。
引っ込み思案で強く言えないのでいつも割を食ってばかり。そのくせ無防備で男を見る目もなくて元カレの元上司はガチのクズ。元々のずぼらとストレスによる無気力で自宅はゴミ屋敷寸前。おまけに怒鳴りつけて言うことを聞かす毒親母の過干渉。絵麻の性格の大半は母親の所為だろう。
というあまりにどん底なスタートなので、その後の話が甘々のご都合主義でも、本の中でくらい良いじゃないと思えてしまう。毒舌だけど優しい空との生活で次第に元気を出していく絵麻の様子に、ほっこり笑顔になる。
そんなわけで結構バカップルしてる話なのだけど、中でも付箋のやり取りがとても可愛らしい。スマホがあるのにそれじゃなくて付箋というチョイスが、言葉に血が通っている気がして温かさを感じる。
甘く温かな気持ちにさせてくれる話だった。後半はクズ上司と毒親への憤りが勝ってしまうので、ラストより中盤の幸せムードの方が甘かったかな。




と、それなりに楽しんだのだけど、
キャラの配置や境遇が『ニセモノ夫婦の紅茶店』にかなり似ているので、これを出すならも『ニセモノ夫婦の紅茶店』の続きを出してくれと思ってしまうのは許してほしい。