いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Babel II 魔法大国からの断罪」古宮九時(電撃の新文芸)

幾度となく命の危険に遭いながらも、雫のひたむきな前向き思考と魔法士エリクの機転によって切り抜けてきた長い旅路。カンデラ城での禁呪事件を経た後も、行く先々で何故か騒動に巻き込まれながら、遂に二人は当初の目的地であった魔法大国ファルサスへと到着する。日本帰還への糸口を求めて、ファルサス王ラルスとの謁見が実現するが……。
「──立ち去るがよい、外部者よ」
雫の存在を“ありえない異質”と断じ、冷徹な意志を持って王剣を突きつけるラルス。処断を逃れるため、自分が人間であることを証明するために雫が取った行動とは。そしてファルサス城の中で知ることになる、エリクの過去とは。
やがて解明されていく世界の謎。異なる世界の言語を教え合う中で少しずつ降り積もっていった違和感は、衝撃的な事実として雫たちの前に立ち現れる。


1巻の終わりに名前が出てきて驚かさせてくれたどこかの王様、開始早々しれっと出てきてるんですけど!? しかも自分の妃の生まれ変わりみたいな子といるんですけど!? 性懲りもなく例の球に触って今度は未来で光源氏計画ですか?
そんな嬉しいような謎が増えてもにょもにょするような出会いと、もう一つのエピソードを経て、二人はついに旅の目的地ファルサスへ。
個々のエピソードの文庫版との違いは1巻よりは少ない(たぶん。一応Iを読む前に文庫版を軽く読み返してはいる)。ファルサスでの事件や、終盤で明かされるこの世界の言語の実態や雫の特異性の話は、この物語の根源に関わってくることなので、当たり前と言えば当たり前か。カティリアーナは別人だったけど。
2巻はどうしても雫の〇なしバンジーインパクトが強い。危なっかしい雫の行動の中でもとびっきりのやつなので。
いくら肝っ玉が据わっているといっても流石にこれはと思わなくもないが、尊厳と命を天秤にかけて前者をとったり、この後ラルス王に語る魂の話だったり、三姉妹の真ん中の目立たない子としてアイデンティティに敏感な雫らしい行動と言える……のかもしれない。今後もこのレベルの思い切りが出て来るんだろうか。エルクの心労が偲ばれる。
ちなみにメアちゃんは今回も影が薄かった。次はそもそも出て来るのか?
そして物語は文庫版読者には未知の三巻へ。