この大陸の在り方にまつわる秘匿された真実を、ファルサス王から知らされた雫とエリク。その情報の中から日本帰還への糸口を見いだした二人は、再び旅に出ようとしていた。だがその時、突如現れた使者に雫は選択を突きつけられる。招かれた先はかねてよりきな臭い噂が絶えなかった大国キスク。彼女に求められた役割は、残忍で知られる王妹オルティアの遊び相手だという。
「それで? お前は何ができる? 自らの口で述べてみよ」
成り行きから雫は、流行り病とされる言語障害の対処法を確立するという大役を負うことに。失敗すれば待つのは無残なる死。旅の庇護者であったエリクのいない中、雫は一人手探りで解決策を探す。そして孤独の姫オルティアとの対峙を重ねるうちに彼女の心根を知り、二人の間柄にも変化が生まれていくのだが……。
灰色髪の魔法士ニケに捕えられ、暴君で噂の姫オルティアのいるキスクに(実質)攫われた雫。一人になった雫が取った行動とは!?な3巻。
まさか雫が“政治”で大活躍するだなんて。予想外にもほどがある。でも、自分の意見を通すための方法が……。
雫の無茶が極まっていた。もう自分の個性に悩んでいた少女はどこにもいない。男前というイメージしかなくなった。
気に入らなければ平気で処刑する姫相手にお説教。「できらぁ!」で言葉を生得出来ない子供の病への対処。信頼してはいけない人物を信頼して呪いを受け、自分を餌に臣下を釣って、城内狂乱時に一人で動き回って刺される……無謀のコンプリートでも目指しているんじゃなかろうか。最早ハラハラとかそういうレベルじゃない。
でも、過ぎるぐらいに一生懸命で死をも厭わない雫だからこそ、オルティアもニケも変われたんだろうな。
雫の優しさと情熱が染み渡るように人を変えていく様子は、彼女の強気の啖呵と合わせて読んでいてとても気持ちが良い。特にオルティア様の後半のデレ化は、強烈なツン期とのギャップが相まって、シリアスな状況なのにニヤニヤしてしまいそうに。
この娘が側にいて一切変わらなかったファルサス王って……。今回も奇行が著しかったし。オスカーさん、おたくの子孫大分おかしいよ!
次回最終巻。エリクと合流して、この世界の言語の秘密と元の世界への帰還という本題に戻る……はず。今回の雫の様子を見ていると帰る気あるのか?と思ってしまうが。そういえばメアは名前すら出なかったな。あんまりな扱いにもう愛想尽かして湖に帰っていても驚かない(苦笑)